第52回日本理学療法学術大会

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物理療法理学療法部門企画 » シンポジウム

[SG-2] シンポジウム 急性期リハビリテーションにおける電気刺激療法の新展開

2017年5月12日(金) 11:00 〜 12:00 B1会場 (東京ベイ幕張ホール No. 1・2)

座長:生野 公貴(西大和リハビリテーション病院リハビリテーション部)

物理療法理学療法部門企画

[SG-2-3] 循環器系疾患への電気刺激療法

岩津 弘太郎1, 飯田 有輝2, 河野 裕治3, 小林 聖典4, 山﨑 武則5, 貝沼 関志6, 碓氷 章彦7, 山田 純生8 (1.枚方公済病院リハビリテーション科, 2.愛知厚生連海南病院リハビリテーション科, 3.藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院リハビリテーション部, 4.名古屋大学医学部附属病院医療技術部リハビリ部門, 5.愛知厚生連海南病院心臓血管外科, 6.名古屋大学医学部附属病院外科系集中治療部, 7.名古屋大学大学院医学系研究科心臓外科学, 8.名古屋大学大学院医学系研究科リハビリテーション療法学専攻)

神経筋電気刺激療法(Neuromuscular electrical stimulation:NMES)は,随意努力を必要とせず他動的に筋活動を促すことが可能であることから,病態により自発的な運動が困難な患者における運動療法の代替療法として有用性が期待されている。
循環器領域では,従来主に安定期の重症慢性心不全患者を対象とした無作為化比較試験が数多く報告されており,2016年のCochrane Libraryによる系統的レビューでは,メタアナリシスにてNMESが有害事象なく重症慢性心不全患者の下肢筋力や運動耐容能を改善することが報告されている。また,NMESは炎症性サイトカインや酸化ストレス,タンパク異化・同化作用といった心不全患者の骨格筋異常の鍵となる因子に対しても有効である可能性が指摘されており,循環器領域のリハビリテーションにおいてもその有用性は高いものと思われる。
一方,近年では集中治療管理を要する重症疾患患者に特異的に認められるIntensive care unit acquired weakness(ICU-AW)という全身性筋力低下の存在や,ICU-AWが長期的機能予後や生命予後に与える影響が明らかになるにつれ,急性期リハビリテーションにNMESを応用することへの期待が高まっている。先行研究では,重症敗血症患者や人工呼吸器管理中の呼吸不全患者,腹部外科術後患者などを対象とした無作為化比較試験が実施されており,安全性や有効性が報告されている。しかしながら,急性期循環器疾患を対象とした検討は極めて少なく,臨床応用にあたってはその安全性や有効性に関する懸念事項がある。安全性の面では,急性期の循環動態,特に不整脈やペースメーカーへの影響や,浮腫への影響が懸念される。また,有効性の面でも,急性期のタンパク異化亢進状態においてNMESが十分に効果を発揮することが可能かといった懸念がある。
本シンポジウムではこれらの懸念事項に関する最近の知見を我々の自験例とともに提示し,今後の課題を検討したいと思う。