第52回日本理学療法学術大会

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学校保健・特別支援教育理学療法部門企画 » 特別講演

[SG-3] 特別講演 学校保健・特別支援教育理学療法の現状と課題

2017年5月12日(金) 12:50 〜 13:50 A3会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室201)

司会:多田 智美(鈴鹿医療科学大学理学療法学科)

学校保健・特別支援教育理学療法部門企画

[SG-3-1] 学校保健に参入するために必要な関係職種との連携

粕山 達也 (健康科学大学健康科学部理学療法学科)

平成28年度4月より学校保健安全法の一部改正に伴い,全国の学校で運動器検診が開始された。今回の検診の改正では,これまで実施されてきた脊柱側弯の検査に加えて,四肢の状態についても観察し,必要があれば専門医の受診を促すように対応が求められている。

我々は,運動器検診の実態を調査すべく,地域医師会,教育委員会,学校現場に直接足を運び,現状と課題について面接調査を実施した。検診によって運動器障害への対応が義務化されるに伴い,学校医及び養護教諭の負担は増加しており,学校現場でも混乱が生じていた。また,学校教員は多忙を極めており,養護教諭以外の教職員は運動器検診に対する認識が不十分であることも明らかになった。

面接調査に加えて,実際に学校保健活動に理学療法士が協力し,検診への協力や事後措置への関わりについて,各種関係機関と話し合いを行った。教育委員会との関わりの中で生じた課題としては,実施に伴う予算の問題,非実施校との介入格差の問題,医師会との連携の問題が挙げられた。また,医師会との話し合いにおいては,理学療法士が関わることによる診断に対する問題,誤った情報提供による問題などが指摘され,適切なガイドラインに基づく対応の必要性が課題として挙げられた。一方で,養護教諭においては,理学療法士の協力に対して肯定的な意見が多く,子どもの運動器障害に関する予防的関わりについて,専門家の協力を望む声が多かった。

実際に,学校現場で理学療法士が関わる上では,児童,保護者,教職員,学校医,教育委員会,地域医師会,地方自治体など様々な関係者のニーズを把握する必要があり,理学療法士の立場を明確にした上での対応が求められる。理学療法士の社会的認知度を向上させ,地域社会に貢献していくためにも,一歩ずつ関係構築に向けて歩み続けることが必要である。