第52回日本理学療法学術大会

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精神・心理領域理学療法部門企画 » 教育講演

[SG-4] 教育講演 精神保健・医療と理学療法

2017年5月12日(金) 14:10 〜 15:10 A3会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室201)

司会:仙波 浩幸(豊橋創造大学保健医療学部理学療法学科)

精神・心理領域理学療法部門企画

[SG-4] 精神保健・医療と理学療法

内山 靖 (名古屋大学大学院医学系研究科リハビリテーション療法学専攻)

理学療法(physio/physical therapy)は,「生理的な調和を高めるための物理的手段を用いた働きかけの総体」であり,治療的要素に加えて予防や健康増進にも幅広く適用される。わが国では,リハビリテーションの枠組みで医療・福祉領域の一定の役割として急速な発展を遂げてきた。

理学療法における精神保健・医療とのかかわりは,①精神疾患に身体的な疾患や外傷が併存した場合,②精神疾患の治療・介入に,運動や物理的刺激が陽性的な影響を与える場合,③精神疾患によって活動性や体力が低下するなど活動/参加を阻害している場合,適用される。また,精神医学・医療の知見を応用することで,④認知症,高次脳機能低下,抑うつ,意識変容,不安などを有する対象者へ,より効果的な理学療法を実践することを可能にし,併せて,⑤人をどのように捉えるかという理学療法やリハビリテーションの理念の根幹を考える際に有益な知見を得ることができる。

①には,脊髄損傷,手の外科,熱傷,骨折,パーキンソニズムなど多くの病態が該当する。②には,転換性障害に加えて統合失調症やうつ病などの一部が該当する。これらでは,精神科作業療法を含めた多職種連携によるチーム医療が展開され,理学療法の固有の役割を明確にしておく必要がある。また,④は,ICUを含めた急性期理学療法,脳卒中,頭部外傷後等の通過症候群,熱傷,慢性疼痛,産業保健におけるメンタルヘルス不調などでの有効な介入戦力を立案する一助となる。

⑤については,対象者を生物心理社会(BPS)の視点でとらえることの光と影や自立支援の本質を考える際に,精神医療の歴史的な取り組みを踏まえた哲学的な考証に有益な知見を提供する。

上記について,筆者が30年前の大学病院で経験した事例を含めて,国際的視野に立脚した理学療法の拡がりについて今日までの歩みとこの領域の将来を展望してみたい。