第52回日本理学療法学術大会

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日本支援工学理学療法学会企画 » 教育講演1

[SK-2] 教育講演1 義肢・装具対象者を救うために理学療法士は何が出来るか?~「理学療法士の義肢・装具支援の啓発・実態調査」からの報告~

2017年5月13日(土) 12:50 〜 13:50 B1会場 (東京ベイ幕張ホール No. 1・2)

日本支援工学理学療法学会企画

[SK-2-2] 装具編

中野 克己1,2 (1.埼玉県総合リハビリテーションセンター理学療法科, 2.日本支援工学理学療法学会運営幹事)

脳卒中片麻痺者をはじめ,下肢障害により生じた歩行能力の低下に対して,下肢装具(以下装具)が使用される場面は少なくない。装具は2011年理学療法診療ガイドライン第1版(脳卒中)において推奨グレードA,すなわち「行うように勧められる強い科学的根拠がある」とされている。実際臨床の場において,下肢障害が原因で歩行が困難となった人に対して,身体機能の低下を補う適切な装具が処方されることによって,歩行能力が飛躍的に向上する例は少なくない。そして装具は,歩行能力の向上のみならず,それに関係する日常生活動作能力の向上や社会的交流の拡大など,生活全体の質の向上にも寄与している。
しかし,下肢障害者による装具の受け入れ困難,医療従事者の装具に対する関心の低さ,あるいは施設における備品の不足等の理由から,これまで装具が積極的に活用されているとは言い難い。その結果,装具を必要とする人に適切に処方がされていない例,装具の不適合や破損などが放置されている例,相談先がわからず対応できずにいる例などが顕在化しつつあり,これらの人たちを「装具難民」と称する人もいる。
理学療法士は,現在10万人を超え,毎年1万人以上の新たな理学療法士が誕生している。一方,対象領域の拡大に伴い,養成校における装具の授業時間数は削減傾向にあり,卒業生における装具の知識及び技術の低下が懸念されている。国は2025年を目途に,地域包括ケアシステムの構築を推進している。今後,高齢者や障害者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けていく上で,多くの関係職種による支援がより重要となる。本講演では,「理学療法士の福祉用具・義肢・装具支援の啓発・実態調査」の報告から,装具に関わる理学療法士の現状を紹介し,これから理学療法士が果たすべき役割について考えたい。