[SN-1] 特別支援教育が理学療法に求めるもの
我が国は障害者の権利に関する条約に批准し,インクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進が求められている。特に,学校教育においてインクルーシブ教育システムを構築するためには,同じ場で共に学ぶことを追求するとともに,個別の教育的ニーズのある子供に対し,自立と社会参加を見据えて,その時点で教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供できる,多様で柔軟な仕組みを整備することが必要である。つまり,発達障害を含めた障害のある子供が,通常の学級,通級による指導,特別支援学級,特別支援学校といった,連続性のある多様な学びの場において,個々の障害の状態や特性,発達の段階等に応じた指導や支援を一層充実させていくことが求められている。さらに,学校現場では,医療や科学技術等の進歩により,医療的ケアを必要とする子供の増加も顕著で,障害の重度・重複化,多様化への対応や,障害者やその家族の暮らしに対する考え方等も複雑化しており,教育・医療・福祉・保健・労働等の関係機関が一層連携を密にした支援が必要である。しかし,近年の学校現場は,指導経験や実績のある教職員を含む所属職員の大量退職の時代にあって,教職員の若返り化等により,子供の成長を十分に描ききれない若手教職員,実態把握から自立活動の指導目標や内容を導き出すプロセスに確信がもてない新任教職員などの不安の声に対し,校内で,いつ,誰が,どのようにして,支えていけば良いのか,喫緊の課題となっている。こういった実感を解消するために特別支援学校の教育要領・学習指導要領では,専門的な知識や技能を有する教師間の協力の下に指導を行ったり,外部の専門家に指導・助言を求めたりするなど,教師の力量形成を促すように工夫を求めている。そこで,教職員の専門性を高め,障害のある子供一人一人の目標に迫る指導を追求するためには,学校教育において理学療法士等との連携や協働の在り方はどうあればよいか,提案していきたい。