The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本小児理学療法学会企画 » 教育講演1

[SN-2] 教育講演1 筋ジストロフィーの理学療法の現在

Fri. May 12, 2017 5:50 PM - 6:50 PM B1会場 (東京ベイ幕張ホール No. 1・2)

司会:小塚 直樹(札幌医科大学保健医療学部理学療法学科)

日本小児理学療法学会企画

[SN-2] 筋ジストロフィーの理学療法の現在

三浦 利彦 (国立病院機構八雲病院理学療法室)

筋ジストロフィーの代表的な疾患であるデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は最も頻度が高く(男子出生3000人に1人)重症である。自然経過では平均20歳で呼吸不全や心不全で死亡するとされていたが,近年,非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)による呼吸管理と心筋症に対する心保護治療など,集学的治療によりDMDの生命予後は大きく改善し,当院における1991年以降の50%生存率は39.6歳であった。(Neuromuscular Disorders 2011;21:47-51)。歩行能力消失後は活動量の低下を補うため,アシストタイプの簡易電動車いすを活用し,上肢と体幹の良好な動きを引き出すことで二次的障害を予防する。また,全身の筋力低下に関わらず,電動車いすやインターネットなどの支援技術をNPPVと併用することにより,QOLは低下することなく維持されるという報告もある。徒手や機械による咳介助(MI-E)を用いた気道クリアランスを行い,窒息や気管切開を回避し,肺と胸郭の可動性や健常性を維持する呼吸リハビリテーションが推奨されている。また,嚥下障害のあるDMD患者においても,MI-Eを行うことで窒息や誤嚥性肺炎を予防し,できるだけ胃瘻を回避して経口摂取を安全に継続させるための新しい摂食嚥下リハビリテーションの考え方も提示された。PCやタブレット型端末などの支援機器により学習環境や就労の可能性を広げ,活躍するDMD患者も増えてきた。一方,医療面では小児から成人のケアへ,社会面では子供から大人への移行を要するようになり,本人家族などへのガイダンスも必要になっている。DMDでは健常児に比べて自閉症スペクトラムや注意欠陥多動性障害(ADHD)の比率が高く,就学や就労に向けての取り組みや医療的ケアの需要性にも影響しており,さらに多方面からのアプローチが必要である。本講演では,DMDにおける集学的なリハビリテーションにも触れながら,理学療法士の役割についてお話ししたいと思います。