[SP-1] 野球肘検診の目的と意義
成長期の子供において肘スポーツ障害を引き起こす最も大きな要因は,オーバーヘッドスポーツでの上肢の酷使であり,本邦においては,人気の高い野球での投球動作の繰り返しで生じている場合がほとんどである。投球動作における肘関節への負荷で重要なのは,外反および伸展ストレスであり,特に前者は,内側への牽引力により,成長期においては内側上顆下端の骨軟骨障害(内側部障害)を,外側への圧迫力は,上腕骨小頭の離断性骨軟骨炎(小頭OCD)を引き起こす。上記病態は,初期の段階では,症状がないか軽微の場合もあり,医療機関を受診する機会が少なく,その早期発見が困難であった。しかし近年,全国各地における野球肘検診の普及および検診現場での超音波検査の使用に伴い,特に無症候性の小頭OCDの発見と早期の治療介入が可能となってきた。そこで今回,成長期の子供における内側部障害や小頭OCDの病態を解説するとともに,演者らが関与している横浜市における野球肘検診の現状を報告する。