第6回日本地域理学療法学会学術大会

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事例・症例セッション

事例・症例セッション

[CA] 事例・症例セッション

Sun. Dec 15, 2019 12:50 PM - 1:50 PM Room1 (Terrsa hall)

訪問・通所リハにおける効果的な介入
司会:田後裕之

1:20 PM - 1:35 PM

[CA-03] 在宅心不全患者とACPを行い,人生の最終段階における医療の意思決定支援に関わった経験

*稲垣 圭亮1、阿部 祐子1,2、野々山 紗矢果1、宮島 拓実1、榊原 由起子1、松下 寛代1、都築 晃1,2、金田 嘉清1,2 (1. 藤田医科大学地域包括ケア中核センター訪問看護ステーション、2. 藤田医科大学保健衛生学部)

Keywords:在宅、心不全、ACP

【はじめに,目的】
近年,人生の最終段階において自らが望む医療・ケアを受けることができるようアドバンス・ケア・プランニング(以下:ACP)を行うことの重要性が提唱されている.さらに,高齢多死社会の進行を背景に,平成30年3月厚生労働省は「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」を改定した.このガイドラインでは,病院だけでなく介護施設や在宅の現場も想定し,医師のみでなく,医療・ケアチームで本人・家族を支える体制を作ることを必要としている.そのため,理学療法士(以下:PT)も最善の医療・ケアを提供できるよう人生の最終段階における医療の意思決定支援を行うことが求められる.今回,訪問リハビリテーション(以下:訪問リハ)支援中であった心不全患者に対し,PTがACPに参加し,人生の最終段階における医療の意思決定支援に関わった経験を報告する.
【症例紹介】
70歳代男性.妻と二人暮らし.要支援2.3年前に拡張型心筋症との診断を受け,両室ペーシング機能付き植込型除細動器を留置した.その後は慢性心不全により入退院を繰り返していた.7ヶ月前より身体機能,活動量低下のため,週1回の訪問リハ,2ヶ月に1回の訪問看護を開始した.支援開始時,FIM運動項目は87点,認知項目は35点であった.ゴルフに行くことを目標に,活動量は向上しつつあった.しかし,2ヶ月前に心不全の増悪により入院となり,1ヶ月前に退院し,在宅支援を再開した.通院治療を継続していたが,本人から通院や入院治療に対して悲観的な発言があった.そこで,訪問看護師,地域包括ケアセンターの社会福祉士と相談し,病院主治医にも確認をした上で,PTが本人・妻とACPを行い,人生の最終段階における医療についての意思決定支援を行った.
【結果】
在宅にてPTが参加し,本人・妻とACPを行った.病状については,本人・妻ともに入院中に主治医から説明を受けており,理解していた.PTより,訪問診療や在宅看取りについて説明を行った.その上で今後望む医療の意思を確認すると,通院から訪問診療に切り替え,在宅にて最期を迎えることを希望した.その後,訪問診療医,看護師,社会福祉士とサービス担当者会議を行い,再度本人・妻の意思を確認し,在宅支援を開始した.ACP後もゴルフに行くという目標を持ち続けられた.それから2ヶ月後,在宅にて死亡した.
【考察】 本人が意思表示できる段階で,ACPを行ったことで,最終的に本人の望む医療を行い,希望した在宅で最期を迎えることができた.しかし,ACPの時期としては,より早期が妥当であった可能性がある.意思決定支援時には,過度に死を意識しないよう配慮することで,前向きな目標を持ち続けることができた.ACPに参加し,人生の最終段階における医療の意思決定支援を行う上で,医学的知識,地域資源,多職種連携,本人,家族との信頼関係の構築が重要となることを認識した.

【倫理的配慮、説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき対象者の保護には十分留意し,厚生労働省の「臨床研究に関する倫理指針」を指標としている.今回の報告内容について,家族に口頭で同意を得ている.