第6回日本地域理学療法学会学術大会

講演情報

大会長賞ノミネート演題発表

大会長賞ノミネート発表

[N] 大会長賞ノミネート演題発表

2019年12月14日(土) 16:30 〜 17:30 第2会場 (東館2階 セミナー室)

座長:樋口 由美(大阪府立大学大学院 総合リハビリテーション学研究科)、田中 康之(千葉県千葉リハビリテーションセンター 地域連携部 地域支援室)

17:20 〜 17:30

[N-06] 訪問リハビリテーションにてEMSハイブリッドトレーニングを施行した一症例

*槇本 良子1、柳澤 幸夫2、福池 映二3 (1. 医療法人緑会小川病院 リハビリテーション部 在宅部門、2. 徳島文理大学 保健福祉学部理学療法学科、3. 医療法人緑会小川病院 リハビリテーション部)

キーワード:訪問リハビリテーション、ハイブリッドトレーニング、電気刺激

【はじめに・目的】近年,在宅医療の推進とともに訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)の需要が増加している.訪問リハに対しては,医師やケアマネージャからは歩行能力・下肢筋力維持向上を求められることが多い.一方で,介護報酬設定からは「実生活の中で何ができるようになったのか」の成果を問われるようになっている.効率的に歩行能力・下肢筋力の底上げを図り実生活面に結び付けるため,より効果を引き出すための手法を模索することは重要と考える.今回,訪問リハ利用者に対し,ペダル漕ぎ運動,同時に大腿四頭筋,ハムストリングスに対して電気刺激(以下,EMS)を行うハイブリッドトレーニングシステム(以下,HTS)を用いたトレーニングを試みた.その結果,良好な成果を認めたため,若干の考察を加え報告する.
【方法】対象は訪問リハ利用者の80歳代の女性(身長 145.0cm,体重47.2kg,BMI22.4)であり,既往歴は右下腿平滑筋肉腫,右大腿骨骨幹部骨折等である.4年前より歩行能力向上目的で訪問リハ利用開始.現在は要支援2でシルバーカー歩行レベルである.今回,1日の訪問リハ40分間のうち20分で座位でのペダル漕ぎ運動(負荷なし)と同時にEMS機器であるひざトレーナー(Panasonic社製)を使用するプログラムを実施した.刺激レベルは本人が耐えうる最大強度で設定し,週2回,期間は3ヶ月,測定は介入前と3 カ月後の2回行った.測定項目は 体組成計を用いて筋肉量及び四肢骨格筋量指標(以下,SMI),Phase Angle(以下,PA),超音波診断装置で大腿部を撮影しての筋厚と筋輝度の計測,その他,膝伸展筋力,TUG,CS-30を測定した.結果は各測定値の前後を比較し検討を行った.
【結果】開始前:全身筋肉量27.3kg,両下肢筋肉量7.64kg,SMI4.76kg/m2,PA3.9°,大腿部30%大腿直筋(以下,RF)筋厚(左)0.705cm(右)0.692,筋輝度(左)135.1(右)154.4,中間広筋(以下,Vl)筋厚(左)0.627cm(右)0.550,筋輝度(左)129.1(右)149.5,下肢筋力(左)11.6kgf(右)6.6,TUG15.6秒,CS-30は10回であった.3ヶ月後:全身筋肉量28.4kg,両下肢筋肉量8.24kg,SMI5.12kg/m2,PA3.8°,大腿部30%RF筋厚(左)1.150cm(右)0.958,筋輝度(左)107.8(右)141.6,Vl筋厚(左)0.746cm(右)0.674,筋輝度(左)123.7(右)128.9,下肢筋力(左) 13.7kgf (右)9.3,TUG12.1秒,CS-30は12回であった.
【結論】今回の対象事例ではPAを除き,介入前に比べ介入後に改善を認めた.ペダル運動にHTSを用いた電気刺激の併用効果により,運動単位増加による筋出力の向上や筋肥大に影響を及ぼし,加えて筋輝度低下から筋内脂肪の減少が示唆された.これらによってTUGやCS-30のパフォーマンス改善に繋がったと考えられる.EMSは循環器系に対する影響も少なく,効果的に骨格筋に負荷を与えることが出来る.したがって,訪問先という制限のある環境下において身体的負担をかけ過ぎることなく,より効果を得られるトレーニング方法の一つとして今後も検討を行っていく.

【倫理的配慮、説明と同意】
倫理的配慮として,被験者およびご家族には口頭及び紙面にて説明し,学会発表の同意の署名を得た後に実施した.