第6回日本地域理学療法学会学術大会

Presentation information

一般口述

健康増進1

[O] 一般口述2

Sat. Dec 14, 2019 1:00 PM - 2:00 PM Room3 (East Building 2nd floor, Middle Conference Room)

座長:藤原 邦寛(あすかい診療所  通所リハビリテーション)

[O-008] 地域高齢者のよりあいどころの創設
~レジスタンストレーニングの効果と栄養状態について~

*上野 浩司1、岩島 隆2 (1. 社会福祉法人 長浜市社会福祉協議会、2. 岐阜保健大学短期大学部 リハビリテーション学科)

Keywords:レジスタンストレーニング、運動機能、栄養状態

【はじめに・目的】
近年、フレイルやサルコペニアなど運動機能の低下や虚弱、低栄養などが要因で、要介護状態またはその恐れになることが懸念されている。地域福祉を推進する本会では、地域高齢者の自主的な身体機能向上を目的とした「通いの場」を立ち上げた。本事業で定期的に運動機能評価を実施した結果、効果が明らかになったので報告する。
【方法】
対象は、本事業に参加した50名(男性10名、女性40名 平均年齢69.5歳±5.1)とした。方法は、3種類の筋力トレーニング機器で筋力強化を週2回、6ヶ月間実施し、回数は30回、リカンベントバイクを5分間実施した。運動機能評価は、3ヶ月に1度、握力や5回立ち上がりテスト(以下、5CS)、片脚立位、Timed Up & Go test(以下、TUG)を測定した。また、栄養評価は簡易栄養状態評価表を使用した。
統計的手法は、正規検定をShapiro-Wilk検定で処理し、正規性がない場合はWilcoxon符合付順位和検定、結果の相関をSpearmanの順位相関係数、栄養評価は24点以上を良好、23.5未満を低栄養のおそれあり(以下、At risk)の2群と運動機能評価をWelchのt検定を用い、有意水準を5%未満とした。なお、統計処理については、PASW statsics for18.0 Microsoft Windowsを使用した。
【結果】
初回から6ヶ月後に有意差が認められた項目は、左片脚立位・5CS・握力(p<0.05)で、それ以外の項目は認められなかった。初回評価時の5CSと右片脚立位(p<0.05)で負の相関を認め、5CSと左片足立位(p<0.05)において弱い相関を認めた。また、初回評価時の栄養と脚力は、左右片脚立位と栄養において正の相関(p<0.05)を認めた。更に、栄養が良好な群とAt risk群と比較するとTUGにおいて有意差(p<0.05)が認められた。
【結論】
本研究は、地域高齢者の身体機能向上を目的としたレジスタンストレーニングによる効果と栄養状態を検証した。結果、左片脚立位、5CS、握力で効果が示唆された。加齢に伴う下肢の筋力低下はTypeⅡ線維で著しくなる。本事業の6ヶ月間で上記のトレーニングや頻度、回数などを実施することでTypeⅡ線維が改善し、運動機能に効果があった。また、栄養評価と運動機能は、初回のみであるが栄養状態がAt riskの場合はTUGに時間を要することが示唆された。山田によると栄養評価の結果がAt riskに達していない者は、筋蛋白分解が助長されるため、十分な効果を得ることが困難となり、パフォーマンスに影響があるとしている。このことからレジスタンストレーニングを行う際は、事前に栄養状態を把握することで、効率の良いトレーニングを助言できる。以上のことから、地域高齢者のレジスタンストレーニングは運動機能に対して効果が明らかとなり、本事業の有用性が示唆された。一方で、身体機能だけではなく、日頃の生活習慣を把握することで更なる効果を期待でき、効率の良い運動を地域住民に提供することで、健康増進や介護予防の一助となる。

【倫理的配慮、説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に則り、また、発表するにあたり本会の承認を得ている。参加者については本研究の趣旨や方法を書面で説明し、署名を得ている。