第6回日本地域理学療法学会学術大会

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一般口述

健康増進1

[O] 一般口述2

Sat. Dec 14, 2019 1:00 PM - 2:00 PM Room3 (East Building 2nd floor, Middle Conference Room)

座長:藤原 邦寛(あすかい診療所  通所リハビリテーション)

[O-009] 医療系大学生の運動習慣の促進要因・阻害要因について

*千田 美紗樹1,2、有田 真己1、中野 渉3 (1. つくば国際大学、2. 筑波記念病院、3. 常葉大学)

Keywords:不活動の若年化、身体活動不足、行動変容ステージ

【はじめに】
厚生労働省による国民の運動習慣者の割合は高齢になるほど上昇を示すのに対し,20代,30代と若い世代ほど運動習慣が身についていない現状である。若年者の運動習慣を身につけさせることは,身体機能維持や生活習慣病の予防につながることから非常に大切である。これまで運動の習慣化に着目した先行研究の多くは,中高年者を対象としており,若い世代である大学生を対象とした研究は少ない。そこで本研究では,大学生の運動習慣の非定着に影響を与える要因を中心に明らかにすることを目的とする。
【方法】
対象者は,某県内にある医療保健学部に在学中の医療に関する知識のある大学生1463名である。インターネットによる質問紙を配信し,データに欠損がなく,研究の同意が得られた者391名(男性:205名,女性:186名)を対象とした。測定項目は①基本的属性(性別,年齢,BMI),②行動変容ステージ,③簡易版運動習慣の促進要因・阻害要因尺度(石井他,2009)を改変した。統計解析は,行動変容ステージ(5段階)におけるそれぞれの促進要因・阻害要因の各5項目,計10項目の平均点に対し,一要因分散分析を用いた。有意差が認められた場合,多重比較としてTurkeyを用い,検定した。統計解析にはSPSS(version 25)を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
行動変容ステージのうち「無関心期/関心/準備期」といった運動に興味関心が低い者の割合は,男性80%,女性65%と極めて高値を示した。また,運動習慣に対する促進要因は,ストレス解消やリラックスといった心理的項目,および交友関係が深まるといった対人関係項目に有意差が認められた。多重比較の結果,心理的項目および対人関係項目の得点はいずれも「無関心期」が一番高い得点を示した。一方、運動習慣に対する阻害要因は,疲労など身体・心理的阻害要因項目の得点に有意差が認められた。多重比較した結果,「無関心期」と比較し,「関心期」が高い値を示した。
【結論】
大学生を対象とした本研究結果から,運動を習慣化していない若年者が極めて多いといった厚労省のデータと一致するものとなった。しかし,本来最も運動に関心がないとされる「無関心期」の者の促進要因および阻害要因の得点が一番肯定的であった結果は興味深い。この結果は,健康に対する知識を少なからずとも学習しているであろう医療系の大学生を対象としたからではないかと推測する。したがって今後は,若年者に対し健康に関連する知識の提供や,運動の習慣化に結び付くための効果的な介入方略の開発が急務である。大学生の運動習慣の定着が,生活習慣病の予防につながることを期待する。

【倫理的配慮、説明と同意】
本研究への協力は自由意志であり,協力がなくても不利益を被らないこと,不利益を受けることなくいつでも撤回することができること,また研究で得られた情報は,個人が特定できないように処理し,データおよび結果は研究の目的以外に用いることが無いことをメールで配信し,同意をもって回答を得ることとした。本研究は,つくば国際大学倫理委員会の承認を得た上で実施した。(承認番号:第29-24号)