第6回日本地域理学療法学会学術大会

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一般口述

健康増進1

[O] 一般口述2

Sat. Dec 14, 2019 1:00 PM - 2:00 PM Room3 (East Building 2nd floor, Middle Conference Room)

座長:藤原 邦寛(あすかい診療所  通所リハビリテーション)

[O-011] 高齢者組織を活用した介護予防活動展開の課題
A県単位老人クラブのアンケート結果から

*中原 和美1、高野 吉朗2 (1. 熊本保健科学大学保健科学部リハビリテーション学科、2. 国際医療福祉大学福岡保健医療学部理学療法学科)

Keywords:高齢者組織、介護予防活動、老人クラブ

【背景・目的】
我が国では、高齢化率が30%を超える2025年を目処に、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるように、医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される地域包括ケアシステムの構築を目指している。本研究では、既存の高齢者組織である老人クラブを活用とした介護予防活動の現状の把握と展開に向けての課題を抽出することを目的に、アンケート用紙を配布し、現在の活動内容、住んでいる地域のソーシャルキャピタル、介護予防活動の実施状況、介護予防活動展開についての考え等について調査を行った。
【方法】
郵送法により、アンケート調査を実施した。A県老人クラブ連合会から提供された住所録を基に、県内45市町村の市町村老人クラブ連合会に協力を依頼した。協力を得られた18市町村内の単位老人クラブの代表者602名に対し、アンケート用紙を配布した。アンケートは、自記式で回答し、基本属性、健康状態、地区単位のソーシャルキャピタル質問項目(藤澤ら;2007)、現在実施している老人クラブ活動の内容、介護予防活動の経験、介護予防活動の積極的導入の課題について尋ねた。
【結果】
回収数は255(回収率42.4%、平均回収率38.7±22.8%)で、県内単位老人クラブの10.6%であった。回収率は、県央地区が最も高かった。回答者の平均年齢は77.2±4.6歳で年齢層は70歳代後半が最多で41.0%であった。また、男性回答は83.9%であった。主観的健康度では、「とても健康」、「まあまあ健康」と回答したものは83.9%であった。ソーシャルキャピタルは、すべての項目で参考値よりも高値であった。現在の単位老人クラブの活動の内容は、ウォーキング、講話等の健康づくり、グランドゴルフ等の身体活動レクリエーション、訪問事業等の友愛・ボランティア活動が主であった。現在、介護予防活動は93.9%で行われていたが、内容は講話が主であり運動の実施や認知症予防の活動等は半数程度と少なく、単発実施で継続できていないものが多数あった。今後の介護予防活動導入の課題としては「参加者がすくない」が全体の56.0%と最も多く、続いて「会員の気持ちの問題」が48%であった。
【結論】
単位老人クラブは、徒歩圏内で集まることができる小地域で組織される高齢者の自主的な組織であり、身近にある集いの場である。そのため、地域包括ケアシステムにおいても、生活支援・介護予防の場の一つとして挙げられている。しかし、介護予防についての意識が低く、啓発段階にあり、今後、専門職が積極的に関わり、啓発に尽力する必要性が明確になった。また、今後の介護予防活動の導入意思の自由回答として、「現状の活動維持で精一杯」との回答が目立ち、高齢者の自主組織が故の予備力の低さが示唆された。

【倫理的配慮、説明と同意】
調査実施にあたり所属機関の倫理審査委員会の承認を受けた (承認番号17034)。アンケートは各市町村老人クラブ連合会会長に対し、研究の目的、方法、個人情報の取り扱い等についての説明書を郵送し、協力の可否について尋ねた。そして、協力可とした市町村内の単位老人クラブ代表者に対し、研究の目的、方法、個人情報の取り扱い等についての説明書とアンケートを配布し、協力を求めた。なお、研究に関する個別の質疑には電話にて対応した。研究協力の同意は、アンケートの返送をもって得たものとみなした。