[O-019] 住民主体の介護予防体操教室への参加が高齢者自身の心身機能に与える影響
-高齢者の「生きがい感」に着目して-
Keywords:自助、介護予防、生きがい感
【はじめに・目的】
広島県尾道市では住民主体の介護予防事業として,シルバーリハビリ体操事業を展開している。この事業は地域在住高齢者の中から養成したシルバーリハビリ体操指導士(以下,指導士)が介護予防体操教室を開催し,体操教室参加者(以下,参加者)の自助・互助を促すものである。尾道市の指導士は事前に理学療法士からの指導を受け,参加者の心身機能の評価も行っている。
我々は指導士や参加者を対象に調査を行い,指導士および参加者の生きがい感が高いことと,体操教室を多く行っている指導士の生きがい感が高いことを明らかにした。しかし,体操教室への参加を継続することが参加者の心身機能に与える影響についてまでは検討できていなかった。本研究では,体操教室への参加を継続することが参加者の心身機能に与える影響について検討を行った。
【方法】
対象は本研究に対して協力が得られた平成28,29年度の尾道市内の体操教室参加者で,初回調査(以下,初年度)から1年後の追跡調査(以下,次年度)が可能であった女性136名とした。事前に研究内容の説明を受けた指導士が体操教室を実施した際に開眼片脚立位時間と握力を測定した。開眼片脚立位時間と握力の測定方法や注意点は,事前に理学療法士が指導士に指導を行った。質問紙調査は,気分・不安障害の調査票(K6日本語版)と生きがい感の調査票(K-Ⅰ式)を用い,K-Ⅰ式は16項目の設問を4つの下位尺度に分類し,総得点と各下位尺度の得点を調査した。調査結果用紙は指導士から直接回収した。回収した調査結果は, K-Ⅰ式の総得点を求めた上で中央値以上のK-Ⅰ式高得点群と中央値未満のK-Ⅰ式低得点群の2群に分けた。統計解析は,群と評価時期を独立変数,各評価結果を従属変数とする対応のある二元配置分散分析を行い,事後検定としてBonferroni法を実施した。
【結果】
両群の片脚立位時間や握力は経時的変化で有意差を認めなかった。K-Ⅰ式高得点群において,K-Ⅰ式の総得点や下位尺度「自己実現と意欲」は初年度と比較して次年度で有意に低下したが,K-Ⅰ式低得点群よりも有意に高く,下位尺度「生活充実感」「生きる意欲」「存在感」は初年度との有意差を認めなかった。一方, K-Ⅰ式低得点群において,下位尺度「自己実現と意欲」には経時的変化を認めず,総得点や「生活充実感」「生きる意欲」「存在感」は,初年度と比較して次年度で有意に増加した。
【結論】
K-Ⅰ式低得点群のすべての下位尺度は1年間で維持・改善が認められた。運動機能は,両群ともに体操教室に1年間継続して参加することで維持できていた。先行研究において,健康心理面の低下と運動機能の低下は関連性があると報告されている。そのため今後も体操教室への参加を継続することにより,運動機能が維持・改善する可能性がある。今後も本調査を継続し,長期的な影響について検討したい。
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は演者所属の研究倫理委員会の承認を受けた(承認番号:第16MH001号および第17MH067号)。調査対象者には事前にインフォームド・コンセントを取得し,自由意志に基づいて本人署名入りの同意文書を用いて参加への同意を得た。文書に基づく参加者への説明は,事前に研究実施責任者と分担者から文書を用いて十分な説明を受け,研究への協力の同意が得られた指導士が行った。また,同意しない場合または途中で参加を取りやめた場合でも,参加の有無によって一切不利益を受けることはないことを説明した。
広島県尾道市では住民主体の介護予防事業として,シルバーリハビリ体操事業を展開している。この事業は地域在住高齢者の中から養成したシルバーリハビリ体操指導士(以下,指導士)が介護予防体操教室を開催し,体操教室参加者(以下,参加者)の自助・互助を促すものである。尾道市の指導士は事前に理学療法士からの指導を受け,参加者の心身機能の評価も行っている。
我々は指導士や参加者を対象に調査を行い,指導士および参加者の生きがい感が高いことと,体操教室を多く行っている指導士の生きがい感が高いことを明らかにした。しかし,体操教室への参加を継続することが参加者の心身機能に与える影響についてまでは検討できていなかった。本研究では,体操教室への参加を継続することが参加者の心身機能に与える影響について検討を行った。
【方法】
対象は本研究に対して協力が得られた平成28,29年度の尾道市内の体操教室参加者で,初回調査(以下,初年度)から1年後の追跡調査(以下,次年度)が可能であった女性136名とした。事前に研究内容の説明を受けた指導士が体操教室を実施した際に開眼片脚立位時間と握力を測定した。開眼片脚立位時間と握力の測定方法や注意点は,事前に理学療法士が指導士に指導を行った。質問紙調査は,気分・不安障害の調査票(K6日本語版)と生きがい感の調査票(K-Ⅰ式)を用い,K-Ⅰ式は16項目の設問を4つの下位尺度に分類し,総得点と各下位尺度の得点を調査した。調査結果用紙は指導士から直接回収した。回収した調査結果は, K-Ⅰ式の総得点を求めた上で中央値以上のK-Ⅰ式高得点群と中央値未満のK-Ⅰ式低得点群の2群に分けた。統計解析は,群と評価時期を独立変数,各評価結果を従属変数とする対応のある二元配置分散分析を行い,事後検定としてBonferroni法を実施した。
【結果】
両群の片脚立位時間や握力は経時的変化で有意差を認めなかった。K-Ⅰ式高得点群において,K-Ⅰ式の総得点や下位尺度「自己実現と意欲」は初年度と比較して次年度で有意に低下したが,K-Ⅰ式低得点群よりも有意に高く,下位尺度「生活充実感」「生きる意欲」「存在感」は初年度との有意差を認めなかった。一方, K-Ⅰ式低得点群において,下位尺度「自己実現と意欲」には経時的変化を認めず,総得点や「生活充実感」「生きる意欲」「存在感」は,初年度と比較して次年度で有意に増加した。
【結論】
K-Ⅰ式低得点群のすべての下位尺度は1年間で維持・改善が認められた。運動機能は,両群ともに体操教室に1年間継続して参加することで維持できていた。先行研究において,健康心理面の低下と運動機能の低下は関連性があると報告されている。そのため今後も体操教室への参加を継続することにより,運動機能が維持・改善する可能性がある。今後も本調査を継続し,長期的な影響について検討したい。
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は演者所属の研究倫理委員会の承認を受けた(承認番号:第16MH001号および第17MH067号)。調査対象者には事前にインフォームド・コンセントを取得し,自由意志に基づいて本人署名入りの同意文書を用いて参加への同意を得た。文書に基づく参加者への説明は,事前に研究実施責任者と分担者から文書を用いて十分な説明を受け,研究への協力の同意が得られた指導士が行った。また,同意しない場合または途中で参加を取りやめた場合でも,参加の有無によって一切不利益を受けることはないことを説明した。