第6回日本地域理学療法学会学術大会

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一般口述

老年学3

[O] 一般口述5

Sat. Dec 14, 2019 3:20 PM - 4:20 PM Room2 (East Building 2nd Floor, Seminar Room)

座長:松本 大輔(畿央大学 健康科学部理学療法学科)

[O-026] 近隣のバス停・駅の有無は高齢者の認知機能に影響を与える
1年間の縦断研究

*岡本 恭子1、上出 直人2,3、佐藤 春彦2,3、柴 喜崇2、坂本 美喜2 (1. 国家公務員共済組合連合会 九段坂病院 リハビリテーション科、2. 北里大学医療衛生学部、3. 北里大学大学院医療系研究科)

Keywords:地域在住高齢者、認知機能、近隣環境

【はじめに・目的】
地域在住高齢者の認知症の発症に環境要因が関連するとの報告がある.しかし,近隣のインフラストラクチャーの整備状況と認知機能との関連を検討した縦断研究は極めて少ないため,両者の関係性は十分に解明されていない.本研究は,近隣環境と地域在住高齢者の認知機能との関連を縦断的に検討した.
【方法】
本研究は1年間の縦断的観察研究であった.対象は,地域の広報誌で募集した地域在住高齢者で1年間の追跡調査が可能であった262名とした.65歳未満,要支援・要介護認定を受けている高齢者,認知症の疑いがある高齢者は除外した.対象者には,近隣環境,認知機能,身体機能,精神心理機能,社会的要因,生活機能,基本属性について調査した.近隣環境の評価には,International Physical Activity Questionnaire Environmental Module(IPAQ-E)を用いた.認知機能の評価には,Trail Making Test part A(TMT-A)を用いた.身体機能の評価は,Five times chair test(5CST),Timed Up and Go test,快適条件および最速条件での歩行速度,握力,膝伸展筋力を測定した.精神心理機能は,主観的健康感と5項目版Geriatric Depression Scaleにて抑うつの有無を評価した.社会的要因として,他者との交流頻度および外出頻度を調査した.生活機能の評価には,老研式活動能力指標を用いた.基本属性は,年齢,性別,身長,体重,転倒,運動習慣,併存疾患,服薬について調査した.本研究では,従属変数を1年後のTMT-A,独立変数を単変量解析にて1年後のTMT-Aと有意な関連を示したIPAQ-Eの項目,潜在的交絡要因を年齢,性別,ベースラインのTMT-Aおよび単変量解析で1年後のTMT-Aと有意な関連を示した項目とする重回帰分析を行った.
【結果】
単変量解析にて,バス停・駅の有無のみが1年後のTMT-Aと有意な関連を示した(p<0.01).さらに,年齢(p<0.01),主観的健康感(p<0.05),5CST(p<0.01),快適歩行速度(p<0.01),ベースラインのTMT-A(p<0.01)が1年後のTMT-Aと有意な関連を示した.重回帰分析の結果,潜在的交絡要因の影響を全て考慮しても,バス停・駅の有無が1年後の認知機能と有意な関連を示し,バス停・駅が近隣にあると1年後のTMT-Aの成績が良好であることが示された.
【結論】
本研究の結果,地域在住高齢者の1年後の認知機能に,近隣のバス停や駅の有無が関連していることが示された.地域高齢者の認知機能に対しては,交通機関の利便性などの環境要因の評価も重要であると考えられた.

【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は,北里大学医療衛生学部研究倫理審査委員会の承認を得て実施したものである(承認番号2016―G021B).また,本研究の対象者には書面および口頭にて研究目的および内容について説明し,研究協力については書面による同意を得た.