[O-031] 年齢階級別に見た高齢者の就労状況と身体機能、心理機能、社会的因子との関連
―大都市地域における招聘型調査―
Keywords:高齢者、心身機能、就労
【はじめに・目的】
高齢者の就労は,身体運動と知的活動による健康寿命の延伸につながり,医療費の抑制や少子高齢社会における一般労働力人口の確保などが期待される.このようなことから,急速な高齢化が進む本邦において高齢者就労促進の必要性は高いと考えられる.高齢者の就労に関する先行研究では,無就労と要介護リスク,生存率などの関連が示されている.しかし,高齢者の就労に関連する要因の検討は十分とは言えず,高齢者の価値観やライフスタイルが変化する中,現在の状況を把握することの意義は高い.したがって本研究の目的は,大都市地域の招聘型調査から,年齢階級別に高齢者の就労状況と身体機能、心理機能、社会的因子との関連を検討することとした.
【方法】
対象は2017年9月に実施した招聘型調査に参加した65歳以上の地域在住高齢者187人のうち,データに欠損のあった者,要介護状態であった者を除いた180人とした.測定項目は,基本属性として,年齢,性別,就労の有無等,身体機能として,片脚立位時間,歩行速度,Timed Up and Go Test(TUG),連続歩行距離,身体活動量等,心理機能として,Mini Mental State Examination,老健式活動能力指標,主観的健康度等,社会的因子として,教育年数,閉じこもり傾向,社会参加の有無,独居の有無等とした.
統計学的解析では,対象者を就労の有無と年齢(75歳未満,75歳以上)で4群(前期就労群,前期無就労群,後期就労群,後期無就労群)に割付けた.各測定項目の群間比較のために,名義尺度は年齢で層別化したカイ二乗検定を,順序尺度以上の変数は,一元配置分散分析,Kruskal-Wallis検定を行った.有意差を認めた項目については事後検定を実施した.統計解析はSPSS ver.11を使用した.有意水準は5%とした.
【結果】
全対象者の年齢は74.7±5.6(mean±SD)歳,男性は65名(36.1%),就労者は65名(36.1%)だった.各群の内訳は,前期就労群40名,前期無就労群60名,後期就労群25名,後期無就労群55名であった.カイ二乗検定の結果,後期高齢者において就労の有無と性別,独居の有無の間に有意な関連を認めた.群間比較において,後期無就労群は前期就労群,前期無就労群との間に有意差を認め,片脚立位時間,歩行速度,TUG,連続歩行距離,身体活動量,主観的健康度が低値を示した.一方で,後期就労群とその他の群間に有意差は認めなかった.
【結論】
本研究の全対象者の就労率は36.1%であり,国際労働比較2018における日本の65歳以上の就労率22.3%と比較して高い傾向を示した.後期就労群の身体機能と心理機能は,前期就労群,前期無就労群と有意な差がないことから,75歳を越えても,これらの機能が維持できている可能性が示唆された.今後,縦断研究や都市地域,郡部的地域との比較研究を行うことで,高齢者の就労に必要な心身機能,社会的因子を明らかにしていきたい.
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は,札幌医科大学倫理審査委員会の承認を受け実施した(承認番号28-2-7).また,対象者にはヘルシンキ宣言の主旨に沿い,本研究の主旨及び目的を,研究説明書と口頭で十分に説明した.その上で,研究協力同意書を用いて研究参加に同意を得た上で実施した.
高齢者の就労は,身体運動と知的活動による健康寿命の延伸につながり,医療費の抑制や少子高齢社会における一般労働力人口の確保などが期待される.このようなことから,急速な高齢化が進む本邦において高齢者就労促進の必要性は高いと考えられる.高齢者の就労に関する先行研究では,無就労と要介護リスク,生存率などの関連が示されている.しかし,高齢者の就労に関連する要因の検討は十分とは言えず,高齢者の価値観やライフスタイルが変化する中,現在の状況を把握することの意義は高い.したがって本研究の目的は,大都市地域の招聘型調査から,年齢階級別に高齢者の就労状況と身体機能、心理機能、社会的因子との関連を検討することとした.
【方法】
対象は2017年9月に実施した招聘型調査に参加した65歳以上の地域在住高齢者187人のうち,データに欠損のあった者,要介護状態であった者を除いた180人とした.測定項目は,基本属性として,年齢,性別,就労の有無等,身体機能として,片脚立位時間,歩行速度,Timed Up and Go Test(TUG),連続歩行距離,身体活動量等,心理機能として,Mini Mental State Examination,老健式活動能力指標,主観的健康度等,社会的因子として,教育年数,閉じこもり傾向,社会参加の有無,独居の有無等とした.
統計学的解析では,対象者を就労の有無と年齢(75歳未満,75歳以上)で4群(前期就労群,前期無就労群,後期就労群,後期無就労群)に割付けた.各測定項目の群間比較のために,名義尺度は年齢で層別化したカイ二乗検定を,順序尺度以上の変数は,一元配置分散分析,Kruskal-Wallis検定を行った.有意差を認めた項目については事後検定を実施した.統計解析はSPSS ver.11を使用した.有意水準は5%とした.
【結果】
全対象者の年齢は74.7±5.6(mean±SD)歳,男性は65名(36.1%),就労者は65名(36.1%)だった.各群の内訳は,前期就労群40名,前期無就労群60名,後期就労群25名,後期無就労群55名であった.カイ二乗検定の結果,後期高齢者において就労の有無と性別,独居の有無の間に有意な関連を認めた.群間比較において,後期無就労群は前期就労群,前期無就労群との間に有意差を認め,片脚立位時間,歩行速度,TUG,連続歩行距離,身体活動量,主観的健康度が低値を示した.一方で,後期就労群とその他の群間に有意差は認めなかった.
【結論】
本研究の全対象者の就労率は36.1%であり,国際労働比較2018における日本の65歳以上の就労率22.3%と比較して高い傾向を示した.後期就労群の身体機能と心理機能は,前期就労群,前期無就労群と有意な差がないことから,75歳を越えても,これらの機能が維持できている可能性が示唆された.今後,縦断研究や都市地域,郡部的地域との比較研究を行うことで,高齢者の就労に必要な心身機能,社会的因子を明らかにしていきたい.
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は,札幌医科大学倫理審査委員会の承認を受け実施した(承認番号28-2-7).また,対象者にはヘルシンキ宣言の主旨に沿い,本研究の主旨及び目的を,研究説明書と口頭で十分に説明した.その上で,研究協力同意書を用いて研究参加に同意を得た上で実施した.