第6回日本地域理学療法学会学術大会

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一般口述

多職種連携

[O] 一般口述7

Sat. Dec 14, 2019 4:30 PM - 5:30 PM Room3 (East Building 2nd floor, Middle Conference Room)

座長:渡邊 勧(介護老人保健施設桜の郷敬愛の杜 リハビリ課)

[O-041] 身元保証がない独居中年男性の退院支援からの省察

*宮村 大治郎1、佐藤 瞳1、小田 裕子1、沖 泰行1、川口 博史1、内山 仁志1、丸山 朋美1、曾田 繁子2、黒田 仁3 (1. 博仁会 共済病院 リハビリテーション科、2. 同院 相談室、3. 同院 内科)

Keywords:独居男性、アルコール健康障害、退院支援

【目的】生活不全状態で緊急入院となった身元保証のない独居中年男性(以下A氏)は、アルコール多飲習慣から自立歩行が困難となったが、リハビリテーション(以下RH)と退院調整により自宅復帰を果たした。A氏を通して今後増加が懸念される身元保証の無い患者の退院調整について省察する。【方法】A氏は独居の53歳男性。地方国立大学を卒業後、地元を離れ埼玉県内で行政書士として自宅で開業。両親は他界し同胞はなし。30歳代からワインを1日1本以上摂取する習慣があった。入院3か月前より意欲が低下し、徐々に四肢の脱力と歩行障害が出現した。入院3日前より体動困難となり、アパートの管理人を通じて当院へ救急搬送され入院となった。搬入時、アンモニア臭を伴う強い体臭、幻聴、全身の脱力と腰背部に激しい痛みと褥瘡を呈し、意識障害や眼球運動障害はなかったが深部腱反射が亢進していた。頭部CTでは両側側脳室の拡大所見を認め、血液検査ではVB1欠乏や高アンモニア血症はなく、葉酸欠乏症があった。当初のBarthel Index(以下BI)は10点、MMSEは26点。脱水症、栄養障害、廃用症候群として加療が開始された。理学療法は、著明な下肢の筋力低下に対し臨床症状と栄養状態に合わせて、週5日1日1回行った。入院翌日よりベッド上での自動介助運動、入院7日後より離床、入院17日後からT字杖歩行練習を順次実施。最終評価時(入院2カ月後)には、T字杖を使用し連続200mの屋外歩行が可能となり、BIは100点、MMSEは28点まで改善した。退院に向け、本報告者と相談員がA氏の自宅外出に同行し、大量のゴミの整理方法の調整を行った。買い物や家事の一部はタクシ―業者や家事代行業者を利用した経験があるためか、退院後の生活習慣の是正目的に保健師の介入を提案したが本人から拒否された。管理栄養士からの栄養指導と自宅の環境調整を経て退院となった。A氏のエピソードを元に身元保証のない患者の退院支援を省察した。【結果】A氏は65歳以下で特定疾患がないため介護保険の対象ではなく、十分な貯蓄があるため生活保護の受給対象にならず、公的支援が受けづらい状況であった。問題はアルコール健康障害であると考えられたが病識に乏しく、保健師など公的な介入を拒否し、親族も含めて支援者がいないため、退院後の生活習慣を改善するための自覚の醸成が困難であった。埼玉県でも平成30年にアルコール健康対策推進計画が制定されているが、病識のない単身者への視点に乏しく、一般病院のRH職を含め当事者の近くのどの医療者も評価・関与方法について学び、対応策を検討する必要性に気づいた。【結論】退院支援に難渋した身元保証がない症例を経験した。社会的状況と共にアルコール健康障害と乏しい病識の問題もあった。一般病院のRH職も多角的に再発防止のための支援方法を考慮する必要がある。

【倫理的配慮、説明と同意】
本報告はヘルシンキ宣言、当院の倫理審査委員会の基準に準じて実施し、患者に同意を得た。