第6回日本地域理学療法学会学術大会

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一般口述

訪問・通所1

[O] 一般口述8

Sat. Dec 14, 2019 5:40 PM - 6:40 PM Room2 (East Building 2nd Floor, Seminar Room)

座長:桑山 浩明(介護老人保健施設 ローランド 訪問リハ)

[O-043] 健常齢者と比較した通所介護利用者のバランス能力の特徴

*越前谷 友樹1、秋月 千典2、柴田 聡3、崔 原碩4、橋本 敏和4 (1. 埼玉総合リハビリテーションセンター、2. 神戸国際大学理学療法学科、3. 筑波大学、4. 浦安リハビリデイステーション)

Keywords:バランス能力、高齢者、転倒

【はじめに・目的】
通所介護利用者のバランス能力の低下に伴う転倒発生および介護量の増大を防ぐためには、バランス能力に対する多面的な評価と評価結果に基づくアプローチが必要である。しかし、基準となり得る同年代の健常高齢者のバランス能力と比較した通所介護利用者のバランス能力の特徴は、明らかにされていない。そこで我々は、通所介護利用者と健常高齢者のバランス能力を比較検討することで、通所介護利用者のバランス能力の特徴を明らかにするとともに、通所介護利用者に対するバランストレーニングについての知見を得ることを目的とした。
【方法】
地域在住の健常高齢者71名とデイサービスを利用する高齢者83名を対象に、筋力の指標として握力、バランス能力評価としてBrief Balance Evaluation Systems Test(Brief-BESTest)を測定した。健常高齢者の取り込み基準には、1)65歳以上、2)生活の拠点が自宅、3)補助具を使用せずに歩行が自立、を設定した。通所介護利用者の取り込み基準には、1)指示理解が可能、2)介助なしで歩行が可能な者とした。統計解析では、まず年齢・性別・身長・体重について傾向スコアを算出し、適合の許容度を0.08に設定した上で、健常高齢者と通所介護利用者を1:1の比率でマッチングさせた。その後、群間で握力、Brief-BESTestの6つの下位項目(生体力学的制約・安定性限界・予測姿勢制御・姿勢反応・感覚統合歩行安定性)と合計得点の比較をt検定にて行った。統計解析にはIBM SPSS Ver. 25を使用し、いずれも有意水準は5%とした。
【結果】
傾向スコアによるマッチングの結果、31ペア(n = 62)が解析対象として抽出された。マッチング後の属性は、健常高齢者群で年齢71.3 ± 4.0、男女比17 : 14名、身長158.2 ± 7.8cm、体重58.7 ± 11.6kg、通所介護利用者群で年齢71.2 ± 6.8歳、男女比15 : 16名、身長159.5 ± 9.9cm、体重58.8 ± 9.4kgであり、いずれも有意差を認めなかった。 各アウトカムは握力が健常高齢者群で26.2 ± 6.7kg、通所介護利用者群で23.3 ± 7.5kgと有意差は認められなかった(p = 0.111)。Brief-BESTest合計得点は健常高齢者群で19.7 ± 2.7点、通所介護利用者群で10.5 ± 4.5点であり、有意差を認めた(p < 0.01)。Brief-BESTest下位項目は安定性限界以外の5項目で群間での有意差を認めた(すべてp < 0.01)。
【結論】
本研究の結果、年齢・性別・体格が同等の健常高齢者と比較した通所介護利用者のバランス能力の特徴として、安定性限界以外のバランス能力が低下していることが明らかとなった。この結果は、通所介護利用者へのバランストレーニングでは、安定性限界以外のバランス要素に焦点を当てる必要があることを示唆している。

【倫理的配慮、説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき、すべての対象者に本研究の目的や実施内容を口頭と書面にて説明し、書面による同意を得た。