第6回日本地域理学療法学会学術大会

Presentation information

一般口述

訪問・通所1

[O] 一般口述8

Sat. Dec 14, 2019 5:40 PM - 6:40 PM Room2 (East Building 2nd Floor, Seminar Room)

座長:桑山 浩明(介護老人保健施設 ローランド 訪問リハ)

[O-048] 訪問リハビリテーション利用者の身体活動量に影響を及ぼす要因の関連構造
-多施設共同データを用いた横断的研究-

*石垣 智也1、尾川 達也2、宮下 敏紀3、岸田 和也4、松本 大輔5 (1. 名古屋学院大学リハビリテーション学部理学療法学科、2. 西大和リハビリテーション病院リハビリテーション部、3. 森ノ宮医療大学大学院保健医療学研究科、4. 京都きづ川病院 訪問リハビリセンター、5. 畿央大学健康科学部理学療法学科)

Keywords:生活機能、訪問リハビリテーション、身体活動量

【はじめに・目的】
訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)では,生活機能の維持改善を目的として,適切な身体活動量の確保が推奨されている.歩行能力や活動および参加状況が身体活動量に影響すると考えられるが,訪問リハ利用者において,これら関連要因の構造は明らかにされておらず,身体活動量の適正化に向けた介入戦略も整備できていいない.本研究の目的は,訪問リハ利用者における身体活動量に影響する要因の関連構造を検討することである.
【方法】
対象は2015年11月から2019年5月の間に研究協力施設7施設にて訪問リハを受け,利用期間中に身体活動量を測定した108名(男性42名,年齢75.1±10.1歳)とした.除外基準は屋内歩行の非自立者,認知症高齢者の日常生活自立度がⅢ以上,施設に居住するものとした.調査項目は身体活動量測定時の情報とし,基本情報(年齢,性別,要介護度など),歩行能力(Rivermead Mobility Index〈以下,RMI〉),日常生活動作(Functional Independence Measureの運動項目〈以下,運動FIM〉と認知項目〈以下,認知FIM〉),応用的日常生動作(Frenchay Activities Index〈以下,FAI〉)を用いた.身体活動量の測定は活動量計(Active style Pro HJA-750C,オムロンヘルスケア社)を用い,起床から就寝まで6日間測定し,座位行動(1.5METs以下),軽強度活動(1.5METsより大きく3METs未満),中高強度活動(3METs以上)の時間を集計した.データ分析は相関分析および比較統計から各身体活動量に関係する変数を抽出し,身体活動量を説明するモデルの検証を行った.検証には共分散構造分析によるパス解析を用い,モデルの適合度とパスの有意性に基づいてモデルの修正を行った.なお,多重共線性を回避するために,座位行動は分析から除外し,有意水準は5%未満とした.
【結果】
修正後の採用モデルは良好な適合度を示し(AGFI=.93,RMSEA=.02),全てのパスが有意となった.標準化パス係数は1:RMIから運動FIMへ0.54(p<.01),FAIへ0.56(p<.01),中高強度活動へ0.29(p<.01),2:認知FIMから運動FIMへ0.22(p<.01),FAIへ0.17(p<.05),3:女性はFAIへ0.40(p<.01),4:運動FIMから軽強度活動へ0.26(p<.01)5:FAIから運動FIMへ0.21(p<.01),軽強度活動へ0.38(p<.01)であった.
【結論】
訪問リハ利用者の身体活動量は歩行能力を基盤として,活動や参加を介し軽強度活動に影響するとともに,直接的に中高強度活動に影響する.また,認知機能や性別も間接的に軽強度活動に影響する.本研究知見は,適切な身体活動量の確保のために,歩行障害の程度を考慮し,改善可能性を精査したうえで機能の向上を図ること,さらには,認知面や背景因子などの個別特性も踏まえた介入戦略の重要性を示すものである.

【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は共同研究施設である西大和リハビリテーション病院研究倫理委員会の承認(受付番号19)を得て行い,対象者には個人が特定できない匿名化された形式でのデータ利用や他施設へのデータ提供の可能性について説明し,口頭での同意を得た.また,オプトアウト手続きを利用し,対象者には研究への参加を拒否できる機会も保障した.研究協力施設からは,匿名化されたデータ提供のみとし,事前に研究内容や倫理的配慮,実施手順の説明を行い,施設長からの承認を得た.