第6回日本地域理学療法学会学術大会

講演情報

一般口述

訪問・通所2

[O] 一般口述10

2019年12月15日(日) 09:30 〜 10:30 第2会場 (東館2階 セミナー室)

座長:平野 康之(東都大学 幕張ヒューマンケア学部 理学療法学科)

[O-056] 訪問リハビリテーション利用者における身体活動量の特性と生活機能の関係性
-多施設共同データを用いた横断的研究-

*尾川 達也1、石垣 智也2、中原 彩希1、喜多 頼広1、宮下 敏紀3、壹岐 伸弥4、松本 大輔5 (1. 西大和リハビリテーション病院リハビリテーション部、2. 名古屋学院大学リハビリテーション学部理学療法学科、3. 森ノ宮医療大学大学院保健医療学研究科、4. 川口脳神経外科リハビリクリニック、5. 畿央大学健康科学部理学療法学科)

キーワード:生活機能、訪問リハ、身体活動量

【はじめに,目的】
訪問リハビリテーション(訪問リハ)では,機能面だけでなく,活動や参加を通して適切な身体活動量を確保し,生活機能の維持・向上を目指すことが必要となる.しかし,現在まで訪問リハ利用者における身体活動量の特徴は明らかになっておらず,その促進や管理に向けた介入戦略は未だ整理されていない.本研究では,訪問リハ利用者における身体活動量の実態から特性分類を行い,生活機能との関係性について検討することを目的とした.

【方法】
対象は2015年11月から2019年5月の間に協力施設7施設にて訪問リハを受け,利用期間中に身体活動量を測定した108名(男42名,女66名,年齢75.1±10.1歳)とした.除外基準は屋内歩行の非自立者,認知症高齢者の日常生活自立度がⅢ以上,施設に居住するものとした.調査項目は活動量測定時の情報とし,基本属性として年齢,性別,診断名,同居家族の有無,訪問リハ日数,生活機能として歩行能力にRivermead Mobility Index(RMI),応用的日常生活動作にFrenchay Activities Index(FAI)を用いた.身体活動量の測定は活動量計(Active style Pro HJA-750C,オムロンヘルスケア社)を用い,起床から就寝まで6日間測定した. 分析方法は活動量計から算出した8変数を用いて主成分分析および階層的クラスター分析を行い,利用者を身体活動量の特性に準じて分類した.その後,クラスター間での調査項目の比較をKruskal-Wallis検定にて実施した.有意水準は5%未満とした.

【結果】
主成分分析の結果,1つ目は全般的な活動の量を表す変数,2つ目は活動強度や連続活動時間など活動の質を表す変数が抽出された(累積寄与率79.7%).この2主成分を用いた階層的クラスター分析の結果,活動量が少ないクラスター1(n=27),活動量が中間,質は低強度・短時間のクラスター2(n=50),活動量が多く,質は低強度・短時間のクラスター3(n=19),活動量がやや多く,質は高強度・長時間のクラスター4(n=12)の4つに分類された.クラスター間の比較では,歩行能力を示すRMIでクラスター1が他3群と,クラスター2がクラスター4と比較し有意に低値を示した.また,FAIの各項目における特徴的な結果として,食事の片付けや掃除ではクラスター3がクラスター1・2と比較し有意に高く,買い物や外出ではクラスター4がクラスター1と比較し有意に高かった.その他の基本属性に有意差はなかった.

【結論】
訪問リハ利用者の身体活動量に歩行能力は重要な要因であり,改善可能性を精査した上で積極的な機能面への介入が必要となる.一方,高い活動量を有するものは,応用的日常生活動作の中で家事を主とした屋内活動と社会活動を主とした屋外活動に分類され,利用者の背景因子も踏まえた提案の必要性を示した.訪問リハの中で目指すべき活動特性とそれに関係する生活機能を示した本研究の結果は,現場で介入戦略を考察する有用な知見となり得る.

【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は当院の研究倫理委員会の承認(受付番号19)を得て行い,対象者には匿名化された形式でのデータ利用や他施設へのデータ提供の可能性について説明し,口頭での同意を得た.また,オプトアウト手続きを利用し,対象者には研究への参加を拒否できる機会を保障した.研究協力施設からは匿名化されたデータ提供のみとし,事前に研究内容や倫理的配慮,実施手順の説明を行い,施設長からの承認を得た.