第6回日本地域理学療法学会学術大会

講演情報

一般口述

訪問・通所2

[O] 一般口述10

2019年12月15日(日) 09:30 〜 10:30 第2会場 (東館2階 セミナー室)

座長:平野 康之(東都大学 幕張ヒューマンケア学部 理学療法学科)

[O-060] 地域在住高齢者におけるフレイルの予測因子の検討

*齋藤 優季1、桑原 嵩幸1、脇田 正徳1、山﨑 志信1、近藤 圭三1、髙橋 延行2、河合 謹也1、沖塩 尚孝1 (1. 関西医科大学香里病院リハビリテーション科、2. 関西医科大学香里病院内科)

キーワード:栄養、フレイル、歩行

【はじめに、目的】
近年、高齢者の健康問題としてフレイルの概念が注目されている。フレイルは虚弱状態を指し、加齢や疾患によって容易に要介護状態になるリスクを有している。フレイルの主たる原因として、筋力や歩行速度、運動耐用能、身体活動量の低下、低栄養が報告されており、これらが相互に影響してフレイルサイクルに陥ることになる。これらの構成要素のうち、フレイルと関連性の強い要因を抽出することは、フレイルの予防・脱却のために必要な介入方法を検討するのに有効と考えられる。本研究の目的は、地域在住高齢者において、フレイル指標と構成要素との関連性を検討し、重回帰分析によってフレイルとより関連する要因を明らかにすることである。
【方法】
対象は、当院通所リハビリテーション利用中の高齢者78名(年齢:77.2±7.9歳) とした。フレイルスコアには、基本チェックリスト(KCL)を使用した。身体機能として、膝関節伸展筋力(体重比)、快適歩行速度、6分間歩行距離(6MWT)を測定した。栄養状態の評価にはMini Nutritional Assessment(MNA)を使用した。身体活動量として、活動量計(オムロン社製HJA-750C)を一週間装着して、一日あたりの平均歩数を算出した。統計解析では、フレイルスコアと身体機能、栄養状態、身体活動量との関連をPearson積率相関係数、Spearman順位相関係数を用いて検討した。また、フレイルスコアを目的変数、身体機能、栄養状態、身体活動量を説明変数としてステップワイズ重回帰分析を行った。有意水準は5%とした。
【結果】
フレイルスコアは快適歩行速度(r=-0.50)、6MWT(r=-0.49)、MNA(r=-0.40)、平均歩数(r=-0.48)といずれも有意な負の相関を認めた。一方、膝関節伸展筋力とは有意な関連を認めなかった。重回帰分析より、フレイルスコアの説明変数としてMNA(β=-0.30)が有意な要因として抽出された(自由度調整R2=0.29)。
【結論】
フレイルスコアは歩行速度、運動耐容能、栄養状態、身体活動量の指標と関連しており、いずれも重要な指標と考えられた。一方、膝関節伸展筋力とは有意な関連を認めなかった。その理由として、膝関節伸展筋力は膝関節痛の影響を受けやすいため、高齢者の全身筋力の評価としては対象者間の分散が大きいことが考えられた。重回帰分析の結果、フレイルスコアの説明変数として栄養状態が抽出された。栄養状態は運動機能のみならず、認知機能とも関連することが報告されており、地域在住高齢者のフレイルを予測する指標として重要であることが明らかになった。一方、今回検討した身体機能や活動量の指標はフレイルの予測因子として抽出されなかったことから、単一の運動機能のみに着目した介入ではフレイルを改善することは困難であると推察された。本研究の結果、フレイルの予防・脱却のためには、栄養の改善とともに、対象者の身体・運動機能を多面的に評価し、介入方法を検討することが重要であると考えられた。

【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は、当院の研究倫理委員会の承認を受けて実施した。また、個人情報の保護に十分配慮して実施した。