第6回日本地域理学療法学会学術大会

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一般口述

老年学4

[O] 一般口述11

Sun. Dec 15, 2019 10:40 AM - 11:40 AM Room2 (East Building 2nd Floor, Seminar Room)

座長:得丸 敬三(佛教大学 保健医療技術学部理学療法学科)

[O-062] 地域在住後期高齢者のフレイル発生を予測する社会・心理学的因子についての検討

*高取 克彦1,2、松本 大輔1,2、田中 明美3 (1. 畿央大学、2. 畿央大学ヘルスプロモーションセンター、3. 生駒市役所 地域包括ケア推進課)

Keywords:介護予防、フレイル、後期高齢者

【はじめに・目的】
2025年には高齢者人口が30%を超えると推計されているが,中でも医療ニーズの高い後期高齢者人口の増大が注目されている。また骨折・転倒などによる要介護リスクも80歳前後から急激に増大することから,後期高齢者における健康維持・増進は我が国において重要な問題である。近年,健常と要介護状態の中間的状態とされるフレイルの予防が重要視されている。フレイルと判定された高齢者は健常者に比較して高い確率で要介護状態となることが明らかにされているため,現在の介護予防の重点はこのフレイル予防が中心となっている。フレイルは身体的な側面だけでなく,社会的側面および精神・心理的側面を含む概念であるが,フレイルを予測する社会・心理学的因子については十分に調査されていない。本研究の目的は地域在住の後期高齢者におけるフレイルの予測因子を社会的側面および心理学的側面から明らかにすることである。
【方法】
2015年に奈良県A市において実施された基本チェックリストでの評価において非フレイルであった後期高齢者2922名(平均年齢79.0±3.6歳)を2年間前向きに調査し,フレイル発生の予測因子を検討した。フレイル判定には佐竹らの基準に従い,基本チェックリストの該当個数が8個以上をフレイルと判定した。社会活動の評価としてはソーシャルキャピタルの構成要素である近隣者とのつきあいの程度,地域への信頼,地縁活動への参加度合いを調査した。心理的側面については転倒恐怖感の有無,気持ち年齢(主観的年齢)を調査した。またこの他,過去1年間の転倒の有無,閉じこもりの有無および疾病負荷についても評価を行った。データ解析は2017年時点におけるフレイルの有無を従属変数,2015年データの上記評価項目を独立変数とした多重ロジスティック回帰分析を行った。
【結果】
ベースライン調査から2年間のフレイル発生は289名(10.2%)であった。年齢,性別,疾病負荷を調整した多重ロジスティック回帰分析の結果,フレイル発生を予測する独立変数には転倒恐怖感あり(Odds Ratio(OR) 1.8, 95% Confidencial Interval(CI) 1.4-2.3),閉じこもり状態(OR; 2.1, 95%CI; 1.0-4.3),気持ち年齢が高齢(OR 3.7, 95% CI 0.7-19.1)が有意な予測因子として採択された。一方,地縁活動の多さ(OR 0.9, 95% CI 0.8-1.0),地域への信頼の強さ(OR 0.8, 95% CI 0.7-0.9)はフレイル発生に対して防御的に作用していた。
【結論】
後期高齢者におけるフレイル発生の予測因子には,転倒恐怖感や気持ちの若さ,閉じこもりが関連し,フレイル予防対策を考える上ではこれらに対する心理・行動学的アプローチの構築と地域への信頼や地縁活動への参加といったソーシャルキャピタルの醸成が重要であることが明らかとなった。

【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は畿央大学研究倫理委員会の承認を受け実施した(倫理委員会承認番号H27-02)