第6回日本地域理学療法学会学術大会

講演情報

一般口述

老年学4

[O] 一般口述11

2019年12月15日(日) 10:40 〜 11:40 第2会場 (東館2階 セミナー室)

座長:得丸 敬三(佛教大学 保健医療技術学部理学療法学科)

[O-063] 地域在住高齢者における足関節底屈筋Force steadinessと不安定板上での足圧中心変動との関連

*廣野 哲也1,2、池添 冬芽1、山縣 桃子1、加藤 丈博1、木村 みさか3、市橋 則明1 (1. 京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻、2. 日本学術振興会特別研究員DC、3. 京都先端科学大学)

キーワード:不安定板、姿勢制御、Force steadiness

【はじめに,目的】
ある一定の筋力を保持した際の筋力の変動性を評価するForce steadiness(FS)は,筋力発揮を調節する能力の指標として用いられている.我々は,健常若年者を対象として,足関節底屈筋FSと不安定な面上で片脚立位保持させた時の足圧中心(COP)変動との関連を検討した結果,最大筋力の20%のFSはCOP変動と関連を示したが,最大筋力の5%や50%のFSとは関連がみられなかったことを報告した.このことから,不安定な支持面上での立位保持には最大の20%程度の筋力保持を制御する能力が必要であることが考えられる.しかしながら,バランス能力が低下している高齢者において,足関節底屈筋FSが不安定支持面上でのCOP変動と関連するのかについては明らかでない.そこで本研究の目的は,地域在住健常高齢者を対象に,足関節底屈筋FSと不安定板上での静止立位中の足圧中心変動との関連性を明らかにすることとした.

【方法】
地域在住健常高齢女性27名を対象とし,不安定板(BIODEX Balance System SD; Level 4, サンプリング周波数20Hz)上での両脚立位保持課題を40秒間行った.計測された40秒間のうち前後10秒間を除いた30秒間を解析区間とし,前後方向のCOPの標準偏差を算出した.ハンドヘルドダイナモメータ(mobie,酒井医療社製)を使用し,長座位・足関節底背屈0°位で,足関節底屈の最大等尺性筋力(MVC)を計測した.さらに,ダイナモメータから出力される筋力値をソフトウェア(MyoResearch XP,サンプリング周波数1500Hz)に取り込み,リアルタイムで画面に表示させ,5%,20%,50%MVCをそれぞれ目標筋力として20秒間筋力を維持させるFS課題を無作為な順序で計測した.そのうち15秒間を解析区間として,変動係数(標準偏差/平均値)を算出し,FSの指標とした.なお,変動係数は低いほど筋力発揮の調節能力が高いことを意味する.COP前後変動とFS,最大トルク体重比との関連をSpearmanの順位相関係数を用いて分析した.有意水準は0.05とした.

【結果】
COP変動と20%MVCのFSとの間にのみ有意な正の相関を認めた(相関係数0.385,p=0.047).一方,COP変動と5%,50%MVCのFS,最大トルク体重比との間には相関を認めなかった.

【結論】 地域在住健常高齢女性において,不安定な支持面上での両脚立位中のCOP変動には,最大の20%の足関節底屈筋力を保持する能力が関連した.若年者を対象に片脚立位課題を行った先行研究と同様の結果が示された.このことから,不安定な支持面上での立位姿勢制御には最大筋力や最大の5%といった微弱な筋力を調節する能力ではなく,最大の20%程度の筋力保持を調節する能力が関連することが示唆された.

【倫理的配慮、説明と同意】
研究を実施するにあたり,ヘルシンキ宣言,文部科学省及び厚生労働省による疫学研究に関する倫理指針を遵守し,対象者には口頭にて本研究の主旨,目的,方法について詳細に説明を行い,研究参加への同意を書面にて得られた者のみ本研究を実施した.