第6回日本地域理学療法学会学術大会

講演情報

一般口述

老年学4

[O] 一般口述11

2019年12月15日(日) 10:40 〜 11:40 第2会場 (東館2階 セミナー室)

座長:得丸 敬三(佛教大学 保健医療技術学部理学療法学科)

[O-065] 在宅生活を送る要支援者・要介護者の入浴についての実態調査

*識名 満希子1 (1. 名古屋市総合リハビリテーションセンター)

キーワード:入浴動作、入浴補助用具、浴室改修

【はじめに・目的】
在宅生活を送る要支援者・要介護者の入浴動作及び入浴補助用具、浴室改修の有無に関して実態調査を行い、入浴方法・入浴補助用具・身体状況・浴室環境との関連を調べること、入浴補助用具が継続して使用できなかったケースに対してその内容と原因を明らかにすること、在宅生活の要支援者・要介護者が入浴に対してどのような不安を抱えているのかを明らかにしたいと考え、本調査を実施した。
【方法】
当センター通所リハ利用者で、要支援1~要介護3、主疾患を発症してから10年以内であり、且つ研究参加に同意が得られた120名に対してアンケート調査を行った。また、対象者の基本情報(年齢・性別・介護度・疾患名・ADL能力(Barthel Index以下BI)・歩行能力(10m努力歩行速度、Timed Up&Go以下TUG)は介護保険科から情報提供を受け、アンケートで入浴時の動作及び介助量・浴槽の跨ぎ方法・入浴補助用具・住宅改修の有無及びその内容・入浴時の不安について情報を得た。アンケートは郵送及び直接手渡しにて回収した。
統計解析には、SPSS25 for Windowsを用いて、クロス集計及びχ乗検定を行い、その有意水準は5%とした。また、歩行速度と跨ぎ方法の関連に関しては、Spearmanの順位相関係数・Mann-Whitney検定を実施し、その有意水準は5%とした。

【結果】
・入浴方法と介護度の関連については、要支援者は有意に立ち跨ぎを選択し、要介護者は有意に座り跨ぎを選択していることが分かった(p=0.040)。
・入浴方法と身体能力の関係性については、立ち跨ぎを実施している者は、座り跨ぎを実施している者に比べて有意にTUGの値が速いことが分かった(p=0.012)。なお、立ち跨ぎと座り跨ぎの選択の分かれ目になるTUGの値について、ROC曲線を用いて探索するとYouden Indexから求めたカットオフ値は11.9秒であることが示された(曲線の下の領域面積0.686)。
・入浴方法と指導歴の関連については、立ち跨ぎを選択している者は座り跨ぎをしている者と比して、指導された内容と異なる動作をしている者が有意に多かった。(p<0.001)。
・女性は男性と比して浴室改修を実施している者が有意に多かった。(p=0.038)
・福祉用具と浴室環境(浴室改修の有無)の関連については、浴室改修を行っている者は入浴補助用具の導入も有意に多かった(p<0.001)。

【結論】
介護度が要支援から要介護に変わった時点、もしくはTUGで12秒以上時間を要するようになってきた時点を目安に、入浴環境の見直しや必要に応じた動作指導が行われることで、自宅での入浴が継続しやすくなる可能性があると考えられた。

【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は、名古屋市総合リハビリテーションセンター附属病院倫理審査委員会の承認(課題番号2018003)を得て実施した。対象は、本研究への参加は自由意思であり、いつでも意思の撤回ができることを説明した。個人情報については、調査用紙と別に対応表を作成し、個人が特定できない形での集計を行った。