第6回日本地域理学療法学会学術大会

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一般口述

訪問・通所3

[O] 一般口述12

Sun. Dec 15, 2019 1:40 PM - 2:40 PM Room2 (East Building 2nd Floor, Seminar Room)

座長:滝本 幸治(奈良学園大学 保健医療学部リハビリテーション学科)

[O-067] 通所介護利用者における長期的な運動療法の効果判定方法の検討と分析

*津田 章代1、野上 あかり2、綿谷 美佐子2 (1. 専門学校北海道リハビリテーション大学校、2. 株式会社 ルシファ)

Keywords:利用年数、要介護者、近似直線

【はじめに・目的】
在宅要介護者は,介護保険制度を用いた通所サービスや訪問サービスで運動療法を受けていることが多い.理学療法士による運動療法では数か月に一度など定期的に体力測定を行い,その結果から改めて身体能力的目標や運動内容を設定する.しかし,1年以上の長期にわたる運動療法の効果について総括的に研究されているものはない.今回の研究は,リハビリ特化型デイサービス利用者の長期的な運動療法の効果を,定期的に計測した体力測定結果から判定する方法を検討することと,各体力測定結果を利用年数間で比較することで運動療法がどのように身体能力に効果を及ぼしているのかを分析することを目的とした.
【方法】
対象は,リハビリ特化型デイサービス施設Aを利用している要介護者51名 (男性38名,女性13名,年齢73.5±8.9歳,介護度1:27名,2:14名,3:6名,4:3名,5:1名,利用年数1年未満11名,1~2年未満11名,2~3年未満14名,3年以上15名) だった.A施設では3ヶ月に一度体力測定を行っており,対象者が開始当初から2018年11月現在までに計測した体力測定結果を使用した.項目は握力,片脚立位,Time up and go test,ステッピングテスト,5回立ち上がり,10m歩行,3分間歩行距離だった.それぞれの測定結果について横軸に測定回数,縦軸に結果をプロットしその近似直線を描き,傾きを求めた.項目によっては傾きが+で改善,-で改善を示す場合があるため,すべて+で改善を示すよう絶対値をとった.対象者は利用年数が1年未満,1~2年未満,2~3年未満,3年以上の4群に分け,年齢,介護度,測定項目それぞれについて対応のない一元配置分散分析を行った.有意水準を5%未満とし,有意差がみられたものに対し多重比較を行った.
【結果】
利用年数は1年未満11名 (男性8名,女性3名),1~2年未満11名 (男性9名,女性2名) ,2~3年未満14名 (男性10名,女性4名) ,3年以上15名 (男性11名,女性4名) だった.年齢,介護度において利用年数間で差はなかった.5回立ち上がりでは1年未満と1~2年未満間で有意差がみられ,1年未満の方が有意に傾きが大きかった.10m歩行では1年未満と2~3年未満間で有意差がみられ,1年未満の方が有意に傾きが大きかった.3分間歩行距離では1年未満と2~3年未満,1年未満と3年以上間でそれぞれ有意差がみられ,いずれも1年未満の方が傾きが大きかった.5回立ち上がり,10m歩行,3分間歩行距離以外の測定項目で利用年数間に有意差はみられなかった.
【結論】
近似直線は測定回数が多ければ信頼性が増す.そのため長期利用者の体力測定結果の近似直線を描きその傾きにより効果判定が可能であると考えられる.身体能力は年齢と共に低下するが,運動療法により要介護者も身体能力を維持できた.しかし下肢筋力,歩行能力は利用年数が増えると低下した.これらのことから長期利用者の運動療法効果を分析し,今後の目標等に反映する必要があると考える.

【倫理的配慮、説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に則って計画された.被験者には書面にて研究の目的,方法,個人が特定されない情報の扱いと研究終了後の処分について,研究不参加もしくは途中で参加を中止しても不利益を生じないことを説明し,書面にて同意を得た.また,本研究は専門学校北海道リハビリテーション大学校の倫理委員会の承認を得た(承認番号YR18002).