[O-069] 段階的な介助指導が在宅要介護者のトイレ動作改善と主介護者の介護負担感に与える影響
Keywords:介助指導、トイレ動作、介護負担感
【はじめに,目的】
トイレ動作の介助は,主介護者の介護負担感の増加につながり,在宅生活を困難にする要因の1つと報告されている.その為,トイレ動作の自立は在宅生活を継続するうえで重要である.在宅でのトイレ動作は,主介護者が関わる場面が多く,訪問リハビリテーション(訪リハ)時の介助指導によって動作改善と主介護者の介護負担感を軽減することが有用と考える.本研究は,段階的な介助指導が在宅要介護者のトイレ動作改善と主介護者の介護負担感に与える影響について検討することを目的とする.
【方法】
要介護者は,左被核出血で右重度運動麻痺を呈した70歳代女性である.第40病日に回復期病棟に入院し,第215病日,長女(主介護者)宅へ退院した.第218病日から訪リハ(PT週1回60分)を利用した.退院時のトイレ動作は,FIM2点であり,清拭は自立していたが,下衣の上げ下げに介助が必要であった.主介護者の介護負担感は,Zarit介護負担尺度日本語短縮版(Zarit短縮版:8項目からなる質問紙で,高値ほど介護負担感の増加を示す)20/32点であった.主介護者は,週3回出勤し,息子の学校行事にはトイレ介助が理由で参加できなかった.初回介入時のPT評価では,要介護者は背中を壁につけることで下衣の上げ下げが部分的にできていたが,主介護者は全介助をしていた.その為,要介護者が最大限の動作能力を発揮できるように主介護者に対する介助指導を実施した.第218病日からPT評価を基に,要介護者のできる範囲の下衣の上げ下げは介助せず,できない範囲を介助するよう指導し,介助方法を毎週確認した.要介護者の下衣の上げ下げの可能範囲の拡大に応じて,主介護者の介助量を減らした.第295病日にトイレ動作はFIM5点となった.しかし,要介護者がトイレ動作を1人で行う自信がNumerical Rating Scale(NRS)0/10点であり,自信の喪失から自立に至らなかった.そこで,主介護者の監視条件を(1)トイレの扉を開けて近位監視(2)トイレの扉を開けて遠位監視(3)トイレの扉を閉めて実施の3段階に設定し段階的に要介護者の自信の向上を図った.
【結果】
第342病日,要介護者がトイレ動作を1人で行う自信がNRS9/10点となり,トイレ動作はFIM6点となった.要介護者のトイレ動作が自立したことで留守番が可能となり,主介護者は,週4回の出勤と息子の学校行事への参加が可能となった.主介護者の介護負担感は,Zarit短縮版12/32点に減少した.また,介入期間中の介護負担感の増加は認めなかった.
【結論】
在宅でのトイレ動作自立には, PTが主介護者の介助方法や要介護者のトイレ動作への自信を評価し,要介護者が最大限に動作能力を発揮できるよう主介護者への介助指導を実施する必要があると考える.また,PT指導のもと主介護者への介助指導を継続して行い要介護者への過介助を防止したことが,介入期間中の介護負担感の減少につながったと考える.
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は,当院の臨床研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号366).本報告に際して,要介護者と主介護者に対して研究概要を文書と口頭にて説明し,同意を得た.
トイレ動作の介助は,主介護者の介護負担感の増加につながり,在宅生活を困難にする要因の1つと報告されている.その為,トイレ動作の自立は在宅生活を継続するうえで重要である.在宅でのトイレ動作は,主介護者が関わる場面が多く,訪問リハビリテーション(訪リハ)時の介助指導によって動作改善と主介護者の介護負担感を軽減することが有用と考える.本研究は,段階的な介助指導が在宅要介護者のトイレ動作改善と主介護者の介護負担感に与える影響について検討することを目的とする.
【方法】
要介護者は,左被核出血で右重度運動麻痺を呈した70歳代女性である.第40病日に回復期病棟に入院し,第215病日,長女(主介護者)宅へ退院した.第218病日から訪リハ(PT週1回60分)を利用した.退院時のトイレ動作は,FIM2点であり,清拭は自立していたが,下衣の上げ下げに介助が必要であった.主介護者の介護負担感は,Zarit介護負担尺度日本語短縮版(Zarit短縮版:8項目からなる質問紙で,高値ほど介護負担感の増加を示す)20/32点であった.主介護者は,週3回出勤し,息子の学校行事にはトイレ介助が理由で参加できなかった.初回介入時のPT評価では,要介護者は背中を壁につけることで下衣の上げ下げが部分的にできていたが,主介護者は全介助をしていた.その為,要介護者が最大限の動作能力を発揮できるように主介護者に対する介助指導を実施した.第218病日からPT評価を基に,要介護者のできる範囲の下衣の上げ下げは介助せず,できない範囲を介助するよう指導し,介助方法を毎週確認した.要介護者の下衣の上げ下げの可能範囲の拡大に応じて,主介護者の介助量を減らした.第295病日にトイレ動作はFIM5点となった.しかし,要介護者がトイレ動作を1人で行う自信がNumerical Rating Scale(NRS)0/10点であり,自信の喪失から自立に至らなかった.そこで,主介護者の監視条件を(1)トイレの扉を開けて近位監視(2)トイレの扉を開けて遠位監視(3)トイレの扉を閉めて実施の3段階に設定し段階的に要介護者の自信の向上を図った.
【結果】
第342病日,要介護者がトイレ動作を1人で行う自信がNRS9/10点となり,トイレ動作はFIM6点となった.要介護者のトイレ動作が自立したことで留守番が可能となり,主介護者は,週4回の出勤と息子の学校行事への参加が可能となった.主介護者の介護負担感は,Zarit短縮版12/32点に減少した.また,介入期間中の介護負担感の増加は認めなかった.
【結論】
在宅でのトイレ動作自立には, PTが主介護者の介助方法や要介護者のトイレ動作への自信を評価し,要介護者が最大限に動作能力を発揮できるよう主介護者への介助指導を実施する必要があると考える.また,PT指導のもと主介護者への介助指導を継続して行い要介護者への過介助を防止したことが,介入期間中の介護負担感の減少につながったと考える.
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は,当院の臨床研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号366).本報告に際して,要介護者と主介護者に対して研究概要を文書と口頭にて説明し,同意を得た.