第6回日本地域理学療法学会学術大会

講演情報

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ポスター1

[P] ポスター1

2019年12月14日(土) 15:20 〜 16:20 ポスター会場 (東館3階 D会議室)

[P-06] 地域在住高齢者の「運動回数」「躓き」「椅子からの立ち上がり」を説明する要因
―ICFの構成要因 死生観、QOLとの関係―

*前田 明子1、清水 和彦3、金井 章1,2、辻村 尚子2、野嶋 治2 (1. 豊橋創造大学大学院 健康科学研究科、2. 豊橋創造大学 保健医療学部 理学療法学科、3. 社会福祉法人長寿会 軽費老人ホーム箱根山荘)

キーワード:死生観、ICF、地域在住高齢者

【はじめに・目的】
高齢化が進んだ今日では長寿である事より、健康寿命が重視され、健康づくりや予防に関心が寄せられている。
地域在住高齢者について先行研究では、高齢者の生活の質(Quality of Life;QOL)と身体機能、健康観等、死生観については、終末期等で検討された報告はある。しかし、高齢者の環境因子、QOL、死生観に着目しつつ国際生活機能分類(International Classification of Functioning Disability and Health;ICF)との関係性から構造的に検討した報告は少ない。
本研究では、A市内の地域在住高齢者を対象に調査用紙(以下;用紙)を作成・実施し、その用紙の信頼性を確認した後に「運動回数」「躓き」「椅子からの立ち上がり」に影響する要因を確認した。

【方法】
用紙は、身体機能(運動回数等8項目)、基本チェックリスト6項目、転倒評価リスト3項目、ロコモチェックリスト5項目、PGCモラールスケール(以下;PGC)17項目、平井らが作成した死生観尺度7項目、J-MICC3項目、SF-8を参考に、全57項目の5件法設問と自由記述部分で構成した。用紙はA市の体力測定時に配布し、郵送法で回収した。
回収後、各項目をExcelに入力し、項目群と項目ごとにCronbachαで信頼性係数を確認した。その後、相関係数、差の検定を行い、従属変数を「運動回数」「躓き」「椅子からの立ち上がり」とし、他を独立変数として用紙の各項目を投入し、重回帰分析を行い、関係性を確認した。

【結果】
A市が主催した体力測定参加者(介護認定を持たない65歳以上)75名を対象に用紙を配布、調査に同意、返送された62名(年齢:73.4±5.2)を分析対象とした。
各項目におけるCronbachα信頼性係数は、ICF関連23項目では、最大でも0.11であったが、PGCで0.42、死生観尺度、SF-8の項目群では0.7以上であった。
重回帰分析の結果、「運動回数」では、「未来が明るい」、「些細なことが気にならない」、「躓く」では、「階段昇降時に手すりを使わない」、「精神的に充実をしている」(p<0.05)が抽出された。また「椅子から立ち上がる」では、「連続歩行時間が長い」「今の生活に満足する・幸せと感じる時間がある」(p<0.05)が抽出された。
【考察】
今回作成した用紙の質問項目はα信頼性係数からみて、不良部分もあることから、その解釈では、注意が必要な部分もあるが、「1週間の運動回数」は、「未来が明るい」等の高齢者の死生観に影響を受け、また「躓き」や「椅子からの立ち上がり」は、高齢者の身体機能に支えられるだけではなく、精神的な充実や今の生活に満足する等の前向きな気持ちになることにも関係を持つことが示唆された。
本調査は、対象人数が少なく、用紙の項目も限られており、今後は対象者数を増やすだけではなく、質問項目の精選化を行い、実際の身体機能との関連性の研究を進める必要がある。
【結論】
高齢者の身体機能を高めるだけの介入でははく、心に寄り添う健康活動をすることが大切である。

【倫理的配慮、説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に基づき、研究の目的および研究の方法を口頭および書面にて十分に説明し、同意の得られた者を対象とした。なお本研究は、豊橋創造大学倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:H2017004)。