第6回日本地域理学療法学会学術大会

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ポスター

ポスター1

[P] ポスター1

Sat. Dec 14, 2019 3:20 PM - 4:20 PM Poster venue (East Building 3rd floor, D Conference Room)

[P-08] 要介護高齢者における自宅内転倒と居室環境との関係
~居室入口段差と明るさに着目して~

*坂野 裕也1、松本 大輔2、高取 克彦3 (1. 社会福祉法人清和園、2. 畿央大学健康科学部理学療法学科、3. 畿央大学大学院健康科学研究科)

Keywords:転倒、自宅環境、照度

【目的】わが国の要介護認定率は毎年増加しており、要介護認定となった要因の12.2%が骨折・転倒によるものである。転倒は加齢に伴う身体的要因(内的因子)だけではなく、環境的要因(外的因子)に起因するものも多く発生している。転倒発生場所は外出先のみではなく自宅での転倒も多く、中でも居室での転倒が最も多いと言われている。しかし、転倒予防対策に関する研究は内的因子に着目したものが多く、さらに要介護高齢者における転倒発生と自宅での環境要因について調査した研究は散見される程度である。そこで、転倒経験者の居室に共通の特徴があるかを明らかにすることを本研究の目的とした
【方法】対象は平成29年4月1日から平成31年3月31日までにAデイサービスセンターを利用した要介護高齢者367名(平均年齢84.8±9.0歳、要介護度 中央値2(要介護1-5))である。環境調査は自宅を訪問し、居室入り口の段差、居室内の明るさ等について調査を行った。段差は5cm未満を「小さな段差あり」、5cm~9cmを「中程度の段差あり」、10cm以上を「大きな段差あり」と定義した。居室内の明るさについては居室内で通常使用している照明を点灯させた状態で照度計を居室中央部の床に置いて計測し、300Lux以上を「十分明るい」、101~299Luxを「少し暗い」、100Lux以下を「暗い」と定義した。対象者のうち、自ら移動できない者を除外し、自宅訪問が可能であった284名を分析対象とした。2年間で1回以上自宅で転倒があった者を転倒群、1回もなかった者を非転倒群として分けた。統計解析にはx2検定、フィッシャー直接確率法を用いた。
【結果】調査期間中に自宅での転倒発生は116名(発生率40.8%)に生じていた。転倒群と非転倒群の特徴比較においては年齢、要介護度に有意な差は認めなかった。居室入り口の段差については両群において有意な差は認められなかった。居室の明るさについては、転倒群では「暗い」よりも「少し暗い」居室が多く、非転倒群では「少し暗い」よりも「暗い」居室が多かった。また、転倒群は非転倒群に比較して「少し暗い」(48件)環境条件の該当数が他の照度条件よりも有意に多かった(p<0.01)。
【結論】本研究の結果より,居室入り口の段差の高さよる転倒との関係は明らかではなかったが、部屋の明るさについては「暗い」居室よりも「少し暗い」居室の方が多くの転倒が発生していた。このことより,照度100Lux以下の暗い居室の場合には暗いと認識しやすく転倒に対して注意深く行動する一方、少し暗い居室の場合には、見えていると認識しやすいために行動を自制しにくく,また歩行などの動作時に段差との距離感を見誤る等により転倒に至る可能性が考えられた。

【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は社会福祉法人清和園にて倫理的配慮について審査し、対象者に十分な説明と同意を得て実施した。