[P-10] 短時間型通所リハビリテーションとボッチャ教室の組み合わせによる効果の検証
~教室に全回参加した一症例についての検討~
Keywords:ボッチャ、バランス能力、通所リハビリ
【はじめに】
2020年、オリンピック・パラリンピックが東京で開催される。パラリンピック種目のボッチャは重度障害があっても行うことができ、現在は子どもから高齢者まで楽しめるスポーツの一つである。今回ボッチャに注目し当院の通所リハビリ(以下、通所リハ)利用者向けにボッチャ教室(以下、教室)を利用日以外で開催した。ボッチャに類似したペタンクでは、愛好者は同年代と比較してバランス能力に優れており、それにより転倒発生頻度も明らかに低い値が示されたとの報告から、ボッチャにおいても同様の効果を予測した。そこで、通所リハ単独利用の場合と比較して、教室を組み合わせることによるバランス能力の改善やその他の効果について検証することを目的とした。
【方法】
対象者は教室に参加した通所リハ10名のうち、全回参加した要支援1の70代後半の女性(腰部脊柱管狭窄症)とした。教室は週1回2時間で計10回実施した。介入はABAデザインにて行い、評価は全4回(教室3ヵ月前、開始時、終了時、終了3ヵ月後)とした。測定は片脚立位、CS-30 、SF-36、痛みの評価(VAS)を実施した。また、教室に関するアンケートを実施した。
【結果及び考察】
結果(教室3ヵ月前、開始時、終了時、教室3ヵ月後)の一部を示す。右片脚立位(秒)は4.0,2.0,3.3,4.4、左片脚立位(秒)は5.7,5.0,12.0,6.1、CS-30(回) は15,16,15,15、VAS(cm)は6.0,6.0,4.9,5.0であった。SF-36については、体の痛みは52,31,62,22、全体的健康感は52,17,65,45、活力は44,25,50,44、その他の項目は大きな変化がみられなかった。アンケートでは、教室について大変楽しかったと回答した。教室開始時と終了時を比較すると、右片脚立位ではほとんど変化がなかったが、左片脚立位においては5.5秒から12.0秒に延長した。しかし、CS-30に変化がなかったことから、筋力向上ではなく、ボールを持ち上肢を前後に振る(投球動作)刺激に対し、左下肢を軸とした姿勢保持を求められることによる姿勢制御機能の向上が考えられた。Mishraは友人との接触が大きいレクリエーション活動ほど生活満足感が高くなる傾向があることを実証している。教室では勝った時や投球が成功した時等に他者からの賞賛が活発に行われており、アンケートでは大変楽しかったとの回答から、ボッチャを通した活動による充足感が痛みの軽減や全体的健康感、活力の向上に影響を与えたと考える。
【結論】
通所リハ単独利用よりも、教室を組み合せることでバランス能力の改善と心理的効果をもたらす可能性が示唆された。しかし併用効果は教室3ヵ月後までは継続しなかった。
【倫理的配慮、説明と同意】
対象者に対しては教室内容及び研究に関する説明を口頭及び書面にて十分に行い同意を得た上で行った。尚、本研究は愛知医療学院短期大学倫理委員会の承認を受けて実施した。
2020年、オリンピック・パラリンピックが東京で開催される。パラリンピック種目のボッチャは重度障害があっても行うことができ、現在は子どもから高齢者まで楽しめるスポーツの一つである。今回ボッチャに注目し当院の通所リハビリ(以下、通所リハ)利用者向けにボッチャ教室(以下、教室)を利用日以外で開催した。ボッチャに類似したペタンクでは、愛好者は同年代と比較してバランス能力に優れており、それにより転倒発生頻度も明らかに低い値が示されたとの報告から、ボッチャにおいても同様の効果を予測した。そこで、通所リハ単独利用の場合と比較して、教室を組み合わせることによるバランス能力の改善やその他の効果について検証することを目的とした。
【方法】
対象者は教室に参加した通所リハ10名のうち、全回参加した要支援1の70代後半の女性(腰部脊柱管狭窄症)とした。教室は週1回2時間で計10回実施した。介入はABAデザインにて行い、評価は全4回(教室3ヵ月前、開始時、終了時、終了3ヵ月後)とした。測定は片脚立位、CS-30 、SF-36、痛みの評価(VAS)を実施した。また、教室に関するアンケートを実施した。
【結果及び考察】
結果(教室3ヵ月前、開始時、終了時、教室3ヵ月後)の一部を示す。右片脚立位(秒)は4.0,2.0,3.3,4.4、左片脚立位(秒)は5.7,5.0,12.0,6.1、CS-30(回) は15,16,15,15、VAS(cm)は6.0,6.0,4.9,5.0であった。SF-36については、体の痛みは52,31,62,22、全体的健康感は52,17,65,45、活力は44,25,50,44、その他の項目は大きな変化がみられなかった。アンケートでは、教室について大変楽しかったと回答した。教室開始時と終了時を比較すると、右片脚立位ではほとんど変化がなかったが、左片脚立位においては5.5秒から12.0秒に延長した。しかし、CS-30に変化がなかったことから、筋力向上ではなく、ボールを持ち上肢を前後に振る(投球動作)刺激に対し、左下肢を軸とした姿勢保持を求められることによる姿勢制御機能の向上が考えられた。Mishraは友人との接触が大きいレクリエーション活動ほど生活満足感が高くなる傾向があることを実証している。教室では勝った時や投球が成功した時等に他者からの賞賛が活発に行われており、アンケートでは大変楽しかったとの回答から、ボッチャを通した活動による充足感が痛みの軽減や全体的健康感、活力の向上に影響を与えたと考える。
【結論】
通所リハ単独利用よりも、教室を組み合せることでバランス能力の改善と心理的効果をもたらす可能性が示唆された。しかし併用効果は教室3ヵ月後までは継続しなかった。
【倫理的配慮、説明と同意】
対象者に対しては教室内容及び研究に関する説明を口頭及び書面にて十分に行い同意を得た上で行った。尚、本研究は愛知医療学院短期大学倫理委員会の承認を受けて実施した。