第6回日本地域理学療法学会学術大会

Presentation information

ポスター

ポスター4

[P] ポスター4

Sun. Dec 15, 2019 1:40 PM - 2:40 PM Poster venue (East Building 3rd floor, D Conference Room)

[P-105] 低活動高齢者の大腿部筋量評価
-大腿部周径囲との関係について-

*續木 丈之1、滝谷 史織1 (1. 岩手県立大東病院 リハビリテーション技術科)

Keywords:高齢者、超音波画像診断装置、筋量

【はじめに・目的】
近年、筋の評価としてMRIやCT、超音波画像診断装置等の機器を用いた客観的評価が行われている。これらの方法は筋の量・質を正確に捉え、治療における効果判定として有用な数値を示すが、日々の臨床における導入は難しい面がある。臨床では、筋量を評価する簡便な方法の一つとして周径囲測定があり、有用性についての研究も散見されるが、寝たきりに近い生活で肌の弾性低下や筋萎縮が進行している高齢者(以下、低活動高齢者)を対象とした大腿部周径囲(以下、大腿周径)と筋量の関係についての研究は少なく有用性の判断が難しい。本研究の目的は、低活動高齢者の大腿周径と筋量の関係性を明らかにすることである。この研究目的を明らかにすることで、低活動高齢者のリハビリテーションにおける経時的な筋量評価や治療内容の妥当性を判断する一助となるのではないかと考えられる。
【方法】
当院内科に入院している歩行困難(FIM:1点)でベッド上活動が主体(日常生活自立度:C2~B2)の高齢者27名(男性9名、女性18名、平均年齢89.5歳)を対象とし、退院時の大腿周径、超音波画像診断装置による大腿直筋・中間広筋(以下、大腿四頭筋)の筋厚及び同部位の皮脂厚を測定し、各項目間の相関を求めた。なお、脳血管障害や骨折術後などによる著明な身体機能障害・左右差がみられる場合は対象から除外し、測定はすべて利き足で行った。
1.大腿周径
測定肢位は背臥位とし、測定位置は、上前腸骨棘と膝蓋骨を結んだ線上50%とした。
2.超音波画像診断装置による測定
測定肢位は椅子座位で股・膝関節90°屈曲位・足底接地の状態、測定位置は大腿周径と同様とし、超音波画像診断装置(東芝メディカル社製SSA-320)にて、安静時の大腿四頭筋の筋厚及び同部位の皮脂厚を測定した。
3.統計学的検定
各項目間の相関については、ピアソンの相関係数を求め、有意性の検定を行った。
【結果】
測定位置における大腿周径と大腿四頭筋厚(r=0.77)及び皮脂厚(r=0.72)の間には有意な相関が認められた(p<0.01)。

【結論】
低活動高齢者に対する筋量評価としての上前腸骨棘と膝蓋骨を結んだ線上50%での大腿周径測定は、有用性が高いと判断した。また、大腿周径と皮脂厚との間にも有意な相関が認められたことから、大腿周径で筋量を経時的に評価する際は、同時に皮脂厚測定も行うことで、評価の質がさらに向上すると考えられる。本研究では、一ヵ所のみの比較となったが、これが大腿部の他の測定位置や上肢・体幹などでも同じ結果になるかは今後の比較検討が必要である。今後は本研究での課題を継続して調査し、最終的には日々の臨床において苦渋する低活動高齢者の筋力評価時の主観的要素軽減、再現性や信頼性向上などに繋げていきたい。

【倫理的配慮、説明と同意】
ヘルシンキ宣言に則り、すべての対象者に対し、口頭で研究の目的と内容、プライバシー保護、研究の拒否、中断の自由、本研究の拒否や中断をしても療養生活に不利益は一切生じないことを説明し、文書にて同意を得た。