第6回日本地域理学療法学会学術大会

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ポスター

ポスター4

[P] ポスター4

Sun. Dec 15, 2019 1:40 PM - 2:40 PM Poster venue (East Building 3rd floor, D Conference Room)

[P-109] 退院患者の転倒予防に関するスタッフ教育の多施設実践報告
急性期病院から在宅へシームレスな医療・介護連携

*上田 哲也1、樋口 由美1、根本 敬2、野村 日呂美3 (1. 大阪府立大学大学院 総合リハビリテーション学研究科、2. 湘南鎌倉総合病院 リハビリテーション科、3. 八尾徳洲会総合病院 リハビリテーション科)

Keywords:転倒予防、急性期病院、教育

【背景】
高齢者の転倒は,健康寿命の延伸を阻む要因である.病院からの退院患者は地域在住高齢者に比して転倒率が高いと報告されている.我々は,急性期病院からの退院患者に対する転倒予防戦略として,単一施設の比較介入試験において自宅見取り図を用いた指導が有効であることを示した.そのため今回,多施設で転倒予防の有効性に関するスタッフ教育を実践することとした.
【方法】
関西2施設,関東4施設の合計6施設の急性期総合病院で,転倒予防に関するスタッフ教育を実践した.各病院の教育責任者は,転倒予防に精通した熟練の理学療法士より退院患者に対する転倒予防教育を受け,その内容を当該施設の理学療法士へ伝達した.
【具体的な教育内容】
各病院の教育責任者が,1)退院患者の転倒リスク,2)転倒リスクの外的要因の重要性,住環境整備の有効性に関するエビデンス,3)自宅見取り図を用いた転倒予防指導の,主に3点の内容にて,6施設の急性期総合病院で勤務する理学療法士に対して,約30分間のスタッフ教育を集団にて一度実践した.
具体的には,1)退院患者は地域在住高齢者に比して転倒率が高く,屋内での転倒が多い点,2)転倒予防には,内的要因だけでなく住環境整備等の外的要因の指導も重要であり,セラピストが在宅にて行う住環境整備は有効である点,3)全ての退院患者に対して住環境整備を実施できないため間接的な指導が必要で,自宅見取り図を用いた方法が単一施設において有効性が確認されているといった内容とした.
自宅見取り図を用いた方法に関しては,居間や生活動線の重要性と,生活動線内にある転倒危険因子に関してのスタッフ教育を行い,退院患者に対しては疾患に応じた運動指導中心の退院指導に加えて,自宅退院前に患者に描いてもらった自宅見取り図を用いて転倒予防指導を実施した.転倒危険因子は,先行研究で報告されている段差や敷物,不適切な履物,暗所,紙整理整頓がされていない場所の5つの因子とした.生活動線内等に転倒危険因子があれば,改善策に関して具体的な方法を示した.段差に対しては蛍光テープの使用,敷物に対しては敷物の除去や滑り止めの使用,不適切な履物に対しては履物の除去や転倒予防スリッパの使用,暗所に対しては人感センサー付き照明の使用,整理整頓されていない場所に対しては整理整頓の指導を行うといった改善策を伝えた.
【結語】 急性期総合病院の取り組みとして,約30分間の転倒予防に対するスタッフ教育を行い,退院患者に内的要因だけでなく外的要因に対するアプローチを加えた転倒予防指導を実践することは,急性期病院において在宅支援の拡張的役割を果たせるという意味合いからも,非常に意義があると考える.今後,病院から在宅へシームレスな医療・介護連携が必要になってくるため,このような取り組みが多施設において広がっていくことが重要であると考える.

【倫理的配慮、説明と同意】
スタッフ教育に関する実践報告のため,個人情報が保護されていることを条件に実施した.