第6回日本地域理学療法学会学術大会

講演情報

ポスター

ポスター1

[P] ポスター1

2019年12月14日(土) 15:20 〜 16:20 ポスター会場 (東館3階 D会議室)

[P-12] 通所リハビリテーション施設での装具3種の試行比較による生活用装具の作製

*嶋田 泰大1、三田 久載2 (1. 介護老人保健施設 ききょうの郷、2. 富士リハビリテーション専門学校)

キーワード:通所リハビリテーション、PAFO、装具作製

【はじめに・目的】
通所リハビリテーション施設において、利用者が自分に合っていない装具を着用しているところをよく目にするが、利用者が装具作製する機会は少ない。また、作製時には苦労を要することが多い。
今回、装具業者に種々の評価用装具を借りて比較体験することで、利用者とセラピストの両者が納得した形で作製できた。この経験を報告するとともに、生活期における装具作製に関して考察を述べる。
【方法】
対象は、脳梗塞を2年前に発症し、右麻痺を呈した70代女性。回復期リハ病院を経由して、6か月後に車椅子自走レベルで自宅退院。週3日の通所リハに1年半通い、現在はPAFO (SHB)、4点支持杖使用にて自宅、通所施設内ともに歩行自立。
装具の検討にあたり、PAFO(クレンザック)、PAFO(タマラック)、ゲイトソリューション®の3種で、本人主観、動作観察で比較した。
次に、3種の中で最も良好な結果であったPAFO(クレンザック)と従前の装具歩行とで、TUG、10m歩行速度、ケイデンスを比較し効果判定した。
【結果】
PAFO(クレンザック)では、「左足が出しやすい」との発言があった。動作観察でも、右立脚後期の足関節背屈がみられるようになり、左の振り出し時の股関節の代償動作が軽減していた。PAFO(タマラック)では「足が前にいかない、突っ張る感じがする」との発言があり、動作観察でも右の振り出し時、体幹後傾や股関節外転外旋の代償が増強していた。ゲイトソリューション®では「指が痛い」との発言があった。立脚期の足関節底屈の抑制ができず、骨盤右回旋が生じ、下肢の伸展パターンを助長していた。足趾屈筋群の筋緊張亢進により足趾に痛みが生じていた。
以上より、PAFO(クレンザック)を選択し従前の装具と比較すると、TUGが44.94秒から43.88秒、10m歩行(ケイデンス)が49.44秒(0.76歩/s)から44.75秒(0.85歩/s)と改善していた。その後、今回購入したPAFO (クレンザック)で再評価をすると、TUGが41.19秒、10m歩行(ケイデンス)が39.90秒(0.88歩)と更に改善がみられた。
【結論】
今回、3種の装具を装着して4点支持杖歩行し、従来の装具歩行と比較することで、最適な生活用装具作製に至ることが出来た。今回の最大の利点としては、利用者、セラピストともに実際に体験できることで実感や納得でき、装具作製に至った点である。
生活期リハを取り巻く環境として、備品の少なさや装具業者が頻繁に来ない、相談できるスタッフが少ないなどがある。加えて、セラピスト自身も経験や知識の少なさなどの問題もあり、それらが負のスパイラルを生じさせている。 今回の経験を踏まえ、装具業者にも協力を仰ぎ、環境整備と経験の積み重ね、自己研鑽などによって、生活期でも装具を検討や作製をする環境を作り上げていくことが重要と思われる。

【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は介護老人保健施設ききょうの郷の倫理審査委員会(R1-001)の承認を得られている。また、ヘルシンキ宣言に則り、対象者とその家族には文書と口頭にて説明を行い、自筆の署名をいただいた。 発表協力に際しては、協力者の自由意志を尊重するとともに、意思決定のための情報提示および質疑応答を十分に行った。また、協力者のプライバシーが守られることを十分に配慮し、評価の結果や評価中に撮影した動画は厳重に管理、保管している。発表で静止画や動画を提示する際は本人が特定できないよう画像修正を行うこととする。