[P-13] 通所リハビリテーションによる認知機能の改善効果とその要因分析
キーワード:通所リハビリテーション、運動療法、認知機能
【はじめに・目的】
認知症は介護が必要となる主な原因の一つであり、高齢者において認知機能の維持・改善は重要な課題である。近年、認知機能が身体機能や栄養状態と関連することが明らかになっており、筋力増強運動、有酸素運動などの身体運動が認知機能の改善に有効との報告も散見される。しかし、認知機能に対する運動療法の有効な介入方法については十分に検証されていない。運動療法前後で、認知機能の変化量に関連する身体機能因子を検証することにより、認知機能の改善に有効な介入方法を明らかにできると考えられる。本研究の目的は、通所リハビリテーション利用中の高齢者における認知機能と身体機能、栄養状態の変化を検討し、認知機能の変化量に関連する因子を明らかにすることである。
【方法】
対象は、当院通所リハビリテーション利用中の地域在住高齢者39名(年齢79.6±6.4歳)とした。運動療法は一回あたり40分間、週1-3回の頻度で6ヶ月間実施し、筋力増強運動、有酸素運動、バランス練習、歩行練習を組み合わせた。介入前後で身体機能、栄養状態および認知機能を評価した。身体機能として膝関節伸展筋力、Berg Balance Scale(BBS)、快適歩行速度、6分間歩行テスト(6MWT)を測定した。栄養状態は、体重とMini Nutritional Assessment(MNA)にて評価した。認知機能の評価にはMini Mental State Examination(MMSE)を使用した。統計解析では、介入前後における各指標の変化を対応のあるt検定またはWilcoxon符号順位検定を用いて比較した。また、MMSEの変化量と、身体機能および栄養状態の変化量との関連をSpearmanの順位相関係数を用いて検討した。有意水準は5%とした。
【結果】
6ヶ月間の運動療法により、MMSE(24.9→25.9)、BBS(47.1→48.9)、快適歩行速度(82.9→90.2 cm/sec)、6MWT(255→261 m)、体重(56.8→57.9 kg)、MNA(23.7→24.8)でいずれも有意な増加を認めた。また、MMSEの変化量は、BBSの変化量(ρ=0.38)と体重の変化量(ρ=0.36)とに有意な正の相関を認めた。
【結論】
6ヶ月間の運動療法により、身体機能だけでなく認知機能も有意に改善した。また、認知機能の改善には、バランス機能の改善と体重の増加が関連することが明らかになった。バランス課題は、筋力や有酸素運動よりも認知的な負荷量が多く、バランス機能と認知機能は共通した神経ネットワークを有しているとの報告もあることから、バランス練習は認知機能の改善に有効な可能性がある。一般に、体重の増加および減少は認知機能低下の危険因子とされるが、本研究では高齢者の運動介入による体重増加は認知機能に有利に作用することが示唆された。この背景には、身体運動による食欲増進や、筋量の増加による神経栄養因子などの影響が推察される。本研究の結果、高齢者における認知機能の改善には、バランス改善や運動に伴う体重増加を考慮して運動療法を選択する必要性が示唆された。
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は、当院の研究倫理委員会の承認を受けて実施した。また、個人情報の保護に十分配慮して実施した。
認知症は介護が必要となる主な原因の一つであり、高齢者において認知機能の維持・改善は重要な課題である。近年、認知機能が身体機能や栄養状態と関連することが明らかになっており、筋力増強運動、有酸素運動などの身体運動が認知機能の改善に有効との報告も散見される。しかし、認知機能に対する運動療法の有効な介入方法については十分に検証されていない。運動療法前後で、認知機能の変化量に関連する身体機能因子を検証することにより、認知機能の改善に有効な介入方法を明らかにできると考えられる。本研究の目的は、通所リハビリテーション利用中の高齢者における認知機能と身体機能、栄養状態の変化を検討し、認知機能の変化量に関連する因子を明らかにすることである。
【方法】
対象は、当院通所リハビリテーション利用中の地域在住高齢者39名(年齢79.6±6.4歳)とした。運動療法は一回あたり40分間、週1-3回の頻度で6ヶ月間実施し、筋力増強運動、有酸素運動、バランス練習、歩行練習を組み合わせた。介入前後で身体機能、栄養状態および認知機能を評価した。身体機能として膝関節伸展筋力、Berg Balance Scale(BBS)、快適歩行速度、6分間歩行テスト(6MWT)を測定した。栄養状態は、体重とMini Nutritional Assessment(MNA)にて評価した。認知機能の評価にはMini Mental State Examination(MMSE)を使用した。統計解析では、介入前後における各指標の変化を対応のあるt検定またはWilcoxon符号順位検定を用いて比較した。また、MMSEの変化量と、身体機能および栄養状態の変化量との関連をSpearmanの順位相関係数を用いて検討した。有意水準は5%とした。
【結果】
6ヶ月間の運動療法により、MMSE(24.9→25.9)、BBS(47.1→48.9)、快適歩行速度(82.9→90.2 cm/sec)、6MWT(255→261 m)、体重(56.8→57.9 kg)、MNA(23.7→24.8)でいずれも有意な増加を認めた。また、MMSEの変化量は、BBSの変化量(ρ=0.38)と体重の変化量(ρ=0.36)とに有意な正の相関を認めた。
【結論】
6ヶ月間の運動療法により、身体機能だけでなく認知機能も有意に改善した。また、認知機能の改善には、バランス機能の改善と体重の増加が関連することが明らかになった。バランス課題は、筋力や有酸素運動よりも認知的な負荷量が多く、バランス機能と認知機能は共通した神経ネットワークを有しているとの報告もあることから、バランス練習は認知機能の改善に有効な可能性がある。一般に、体重の増加および減少は認知機能低下の危険因子とされるが、本研究では高齢者の運動介入による体重増加は認知機能に有利に作用することが示唆された。この背景には、身体運動による食欲増進や、筋量の増加による神経栄養因子などの影響が推察される。本研究の結果、高齢者における認知機能の改善には、バランス改善や運動に伴う体重増加を考慮して運動療法を選択する必要性が示唆された。
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は、当院の研究倫理委員会の承認を受けて実施した。また、個人情報の保護に十分配慮して実施した。