[P-16] 医療的ケア児の訪問ハビリテーション
母の不安の軽減と発達支援・姿勢ケア
キーワード:姿勢ケア、医療的ケア児、発達支援
【はじめに、目的】
近年、総出産数は減少傾向にあるものの、低出生体重児の全出生数に対する割合は増加している。これは周産期医療の進歩、新生児集中治療室の整備等によるものであり、新生児・乳児死亡数は年々減少している。こうした医療技術の進歩により、かつては救うことが困難であった人工呼吸器や気管切開等の高度な医療的ケアを日常的に必要とする児(以下、医療的ケア児)が増加している。今後、地域での支援体制が進む中で、訪問で理学療法士が担う役割はより重要なものとなると考える。医療的ケア児への訪問の1事例について報告することで、在宅で理学療法士が行うべき事を再考する。
【方法】
期間は児が入院なく在宅で過ごせた出生417日から587日までとする。対象は医療的ケア児1事例とその家族とする。
【事例紹介とハビリテーション】
女児、37週、1972g、帝王切開で出生。診断名は嚥下障害、食道閉鎖症、低酸素脳症であり、染色体異常は否定された。出生時、呼吸状態不良で気管切開、食道閉鎖に対して食道吻合・胃ろう増設された。出生84日に一時自宅退院、279日目に腹腔鏡下噴門形成術、358日目に咽頭気管分離術、387日目に左大腿骨骨幹部骨折(保存)、この間も誤嚥性肺炎で数回入院され、417日目に状態安定し在宅で過ごせるようになった。児の特徴として伸筋優位の姿勢で反り返りが強く、これに伴い四肢も伸展パターンで緊張が亢進する傾向がみられた。視覚・聴覚は保たれており、頸部の回旋は軽度みられるが、四肢の自発的な動きはみられなかった。右を向いていることが多く、左半身は感覚過敏で左からの刺激には不快反応があった。訪問時には、①呼吸数、SpO2、脈拍、筋緊張を指標にしながらの姿勢ケア②手合わせ・足合わせのような発達に準じた関節可動域運動③定頸に向けての段階的な抗重力姿勢を母と一緒に行い伝達していった。
【結果と考察】
実施期間を通して、筋緊張の緩和、四肢の関節可動域の拡大が図れ、定頸には至らないが頸部の支持も一部可能となった。生活上でも訪問から2ヶ月で縦抱きが可能となり、4か月でかぶりシャツが着られるようになった。また、背臥位で寝ていることが多かったが、左右の側臥位、腹臥位にも体位変換が出来るようになった。母は出生時より児に対する愛着形成が出来ており、医療的なケアの習得も的確であった。一方で退院時に筋緊張が高く座ることは難しくなると言われており、在宅生活では「これからどうなるのか、なにをしてあげられるのか」と漠然とした不安が大きかった。訪問時には母の話を傾聴し、1度に沢山の事を伝え過ぎないように注意した。1週間単位で出来る事を伝え、短期的に課題を解決していく事で徐々に不安の軽減が図れるように進めていった。訪問では病院ではみられない児の発達や、反応を家族に寄り添い喜びを共有できる楽しみがあると考える。
【倫理的配慮、説明と同意】
倫理的配慮として、対象者に対し発表の趣旨を説明し、文章にて同意を得た。また表現するにあたり、個人が特定できないように配慮し、本発表以外では使用しないものとする。
近年、総出産数は減少傾向にあるものの、低出生体重児の全出生数に対する割合は増加している。これは周産期医療の進歩、新生児集中治療室の整備等によるものであり、新生児・乳児死亡数は年々減少している。こうした医療技術の進歩により、かつては救うことが困難であった人工呼吸器や気管切開等の高度な医療的ケアを日常的に必要とする児(以下、医療的ケア児)が増加している。今後、地域での支援体制が進む中で、訪問で理学療法士が担う役割はより重要なものとなると考える。医療的ケア児への訪問の1事例について報告することで、在宅で理学療法士が行うべき事を再考する。
【方法】
期間は児が入院なく在宅で過ごせた出生417日から587日までとする。対象は医療的ケア児1事例とその家族とする。
【事例紹介とハビリテーション】
女児、37週、1972g、帝王切開で出生。診断名は嚥下障害、食道閉鎖症、低酸素脳症であり、染色体異常は否定された。出生時、呼吸状態不良で気管切開、食道閉鎖に対して食道吻合・胃ろう増設された。出生84日に一時自宅退院、279日目に腹腔鏡下噴門形成術、358日目に咽頭気管分離術、387日目に左大腿骨骨幹部骨折(保存)、この間も誤嚥性肺炎で数回入院され、417日目に状態安定し在宅で過ごせるようになった。児の特徴として伸筋優位の姿勢で反り返りが強く、これに伴い四肢も伸展パターンで緊張が亢進する傾向がみられた。視覚・聴覚は保たれており、頸部の回旋は軽度みられるが、四肢の自発的な動きはみられなかった。右を向いていることが多く、左半身は感覚過敏で左からの刺激には不快反応があった。訪問時には、①呼吸数、SpO2、脈拍、筋緊張を指標にしながらの姿勢ケア②手合わせ・足合わせのような発達に準じた関節可動域運動③定頸に向けての段階的な抗重力姿勢を母と一緒に行い伝達していった。
【結果と考察】
実施期間を通して、筋緊張の緩和、四肢の関節可動域の拡大が図れ、定頸には至らないが頸部の支持も一部可能となった。生活上でも訪問から2ヶ月で縦抱きが可能となり、4か月でかぶりシャツが着られるようになった。また、背臥位で寝ていることが多かったが、左右の側臥位、腹臥位にも体位変換が出来るようになった。母は出生時より児に対する愛着形成が出来ており、医療的なケアの習得も的確であった。一方で退院時に筋緊張が高く座ることは難しくなると言われており、在宅生活では「これからどうなるのか、なにをしてあげられるのか」と漠然とした不安が大きかった。訪問時には母の話を傾聴し、1度に沢山の事を伝え過ぎないように注意した。1週間単位で出来る事を伝え、短期的に課題を解決していく事で徐々に不安の軽減が図れるように進めていった。訪問では病院ではみられない児の発達や、反応を家族に寄り添い喜びを共有できる楽しみがあると考える。
【倫理的配慮、説明と同意】
倫理的配慮として、対象者に対し発表の趣旨を説明し、文章にて同意を得た。また表現するにあたり、個人が特定できないように配慮し、本発表以外では使用しないものとする。