第6回日本地域理学療法学会学術大会

講演情報

ポスター

ポスター1

[P] ポスター1

2019年12月14日(土) 15:20 〜 16:20 ポスター会場 (東館3階 D会議室)

[P-20] 要支援・要介護高齢者における上肢支持を用いない起立-着座動作の可否と上肢支持を用いた起立-着座テストの関連

*澤田 圭祐1、橋立 博幸2、菊池 雅樹3、鈴木 友紀4、笹本 憲男5 (1. 医療法人笹本会おおくに訪問リハビリテーション、2. 杏林大学保健学部理学療法学科、3. 医療法人笹本会おおくに通所リハビリテーション、4. 医療法人笹本会グループホームおおくにの家、5. 医療法人笹本会やまなしケアアカデミー)

キーワード:要支援・要介護高齢者、立ち上がり、上肢支持

【はじめに・目的】
端座位からの起立-着座動作はその後の移動・移乗に必要不可欠な動作であり、起立-着座動作を評価するパフォーマンステストとして1回反復起立-着座テスト(ORSTS)および5回反復起立-着座テスト(FRSTS)がある。ORSTSおよびFRSTSは下肢筋力を反映するテストと考えられているが、起立-着座動作自体の評価としての有用性は検証されていない。本研究では、要支援・要介護高齢者を対象に、上肢支持を用いない起立-着座動作の可否に上肢支持を用いたORSTSまたはFRSTSが関連するかどうかを検証するとともに、上肢支持を用いない起立-着座動作の自立獲得を図る際の参考値を検討することを目的とした。
【方法】
手摺による上肢支持を用いた端座位からの起立-着座動作を独力で連続5回実施できる要支援・要介護高齢者85人(平均年齢83.5歳)を対象に、手摺による上肢支持を用いない端座位からの起立-着座動作の可否を確認し、手摺による上肢支持を用いたORSTSおよびFRSTSを実施した。座面高を膝関節90度の高さに設定した端座位を開始肢位として、起立後の立位における大腿骨大転子の高さに設定した手摺を用いて、ORSTSでは1回の起立-着座、FRSTSでは5回連続の起立-着座を実施するために要した時間をそれぞれ測定した。上肢支持を用いない起立-着座動作の可否によって全対象者を可能群と不可能群の2群に分けて測定項目を比較した。
【結果】
上肢支持を用いたORSTSおよびFRSTSは、可能群(ORSTS1.9±0.6秒、FRSTS12.4±4.1秒)が不可能群(ORSTS3.1±1.3秒、FRSTS18.5±7.6秒)と比べて有意な低値を示した。上肢支持を用いない端座位からの起立-着座動作の可否(可:1、不可:0)を従属変数、上肢支持を用いたORSTSまたはFRSTSを独立変数としたロジスティック回帰分析を実施した結果、上肢支持を用いたORSTS(オッズ比)とFRSTS(オッズ比0.808、95%信頼区間0.705-0.925)が有意な関連項目として抽出された。ROC曲線を用いて、上肢支持を用いない起立-着座動作の可否に関わるカットオフ値を検討した結果、FRSTS12.97(感度0.61、特異度0.84)、ORSTS2.51秒(感度0.87、特異度0.74)であった。
【結論】
手摺による上肢支持を用いた起立-着座動作パフォーマンスは上肢支持を用いない起立-着座動作の可否に関連した。手摺による上肢支持を用いたFRSTS13秒未満、ORSTS2.5秒未満であると上肢支持を用いない起立-着座動作ができる可能性が高いと推察された。

【倫理的配慮、説明と同意】
本研究の実施に際して、対象者または家族に対して研究概要を事前に説明し同意を得た。本研究は医療法人笹本会倫理委員会の承認を得て実施した。