第6回日本地域理学療法学会学術大会

講演情報

ポスター

ポスター1

[P] ポスター1

2019年12月14日(土) 15:20 〜 16:20 ポスター会場 (東館3階 D会議室)

[P-24] ICFの参加の項目の実施能力と関連する項目の検討

*前沢 孝之1 (1. 茨城県立医療大学付属病院)

キーワード:参加、Rasch分析、国際生活機能分類

【はじめに、目的】
ICFは多くの職種で情報を共有する際の共通言語として使用が可能なものである。しかし医療の現場では考え方は浸透しているが、もう一つの特徴であるコードについてはうまく活用できていないのが現状である。そこで、ICFの参加の項目の難易度の特徴及び、一般的な機能評価とICFの項目の実施能力の関連について明らかにするとともに、目標設定のための示唆を得ることを目的に調査を行った。
【方法】
当院の回復期リハビリテーション病棟から自宅に退院した歩行可能な脳血管障害患者123名に対し、年齢、性別、および退院時評価項目の6項目(退院時FIM運動項目、退院時FIM認知項目、10m快適歩行速度、TUG,FMA L/E,BBS)および、退院後に取得した5項目(ICFの参加に該当する23項目についての実施状況、LSA,FAI,EQ5D,心理的QOL指標)について、郵送法によるアンケート調査にて回答を得た。ICFの項目の実施状況については、Rasch分析を行い、対象者の能力推定値および、項目の難易度について算出した。その後、対象者のICFの項目の実施能力の高低で2群にわけ、群間の比較を行った。
【結果】
回答のあった37名に対しRasch分析を行った結果より、Rasch Modelに適合しない者2名を除いた35名(平均年齢:61.7±12.9歳,男性:20名,女性:15名)を対象とした。ICFの項目難易度の中央値は0.05であり、項目難易度の中央値よりも高い能力推定値を示した高能力群は22名(能力推定値:1.44±1.06)であり、低い能力推定値を示した低能力群は15名(能力推定値:-0.74±0.68)であった。2群間の比較では、退院時FIM運動項目(p<0.01)、10m快適歩行速度(p<0.01)、TUG(p=0.01)、FMA L/E(p=0.03)、BBS(p=0.01)、FAI(p<0.01)で有意差を認めた。年齢(p=0.95)、退院時FIM認知項目(p=0.13)、LSA(p=0.06)、EQ5D(p=0.12)、心理的QOL指標(p=0.81)では有意差は認めなかった。
【結論】
退院時の参加について、回復期リハビリテーション病棟退院時における関連項目について、BBS、10m歩行速度などと関連が強い可能性があることが明らかとなった。また、本研究では退院後の参加の能力とQOLには関連性は認められなかった。本調査においては、実施しているかどうかのみ調査であり、個人因子や環境因子については検討を行っていない。今後は、能力推定値や身体機能のみならず、実際に家庭や地域で必要なこと、患者がやりがいのあることなどの個人因子、周辺環境や利用可能な社会資源などの環境因子についてもきちんと検討する必要がある。適切な介入ができる様に患者、家族と一緒に目標を共有することも重要であることが分かった。

【倫理的配慮、説明と同意】
調査対象者には,退院1週間前に,研究目的および調査内容,研究参加の任意性と撤回の自由などについて,書面および口頭で説明し,承諾書に署名を得て同意を得た.取得したデータは連結可能匿名化して電子データにて管理した.なお,本研究は,茨城県立医療大学倫理委員会の承認を受けて行った(承認番号609).