第6回日本地域理学療法学会学術大会

Presentation information

ポスター

ポスター2

[P] ポスター2

Sat. Dec 14, 2019 4:30 PM - 5:30 PM Poster venue (East Building 3rd floor, D Conference Room)

[P-29] 軽度要介護認定率と介護予防ボランティア活動状況の関連

*田中 聡1、積山 和加子1、佐藤 勇太1、飯田 忠行1、香川 広美2、古西 恭子3、高橋 彰2、久瑠飛 高成2 (1. 県立広島大学 保健福祉学部 理学療法学科、2. 尾道市役所 福祉保健部 高齢者福祉課、3. 尾道市役所 瀬戸田支所 住民福祉課)

Keywords:介護予防ボランティア、要介護認定率、介護予防事業

【はじめに・目的】
介護保険制度の制定以降,各自治体では様々な介護予防事業に取り組んでおり,広島県尾道市では平成25年度からシルバーリハビリ体操事業を実施している。我々は尾道市の介護予防事業の効果を検証するために,介護予防ボランティアであるシルバーリハビリ体操指導士(以下,指導士)や体操教室参加者に対する調査を実施している。その結果,指導士自身の自助効果や体操教室参加者への互助効果があることを明らかにした。しかし,指導士が市内各地域で行う介護予防が,その地域の介護予防事業として効果を示しているかは検討できていない。そこで本研究では,指導士としての活動が地域の軽度要介護認定者数を抑制できているかについて検証を行った。
【方法】
対象地域は平成25年度から介護予防事業として,シルバーリハビリ体操事業を展開している広島県尾道市とした。尾道市は市内を7つの圏域に分けており,今回は各圏域の指導士活動状況と軽度要介護認定率を調査した。指導士活動状況は指導士会を通じて尾道市が集計したデータを用い,平成29年度の指導士数,指導士認定率(各圏域高齢者に対する指導士の割合),体操教室延べ開催数,体操教室延べ参加者数を抽出した。軽度要介護認定率は,各圏域高齢者に対する要支援1,2と要介護1認定者の割合を求めた。さらにシルバーリハビリ体操事業開始前(平成24年度)の軽度要介護認定率から平成29年度の差分を軽度度要介護認定率の変化量として求めた。統計解析は,軽度要介護認定率と指導士活動状況の関連性をPearsonの相関係数により検討し,有意水準は5%とした。
【結果】
平成29年度の尾道市全体の指導士数は289名だった。尾道市全体の指導士認定率は0.6±0.2%で,北部圏域と東部圏域が0.8%と最も高く,西部圏域が0.3%と最も低かった。体操教室延べ開催数と延べ参加者数は尾道市全体において1,690回と27,563名だった。軽度要介護認定率の変化量は尾道市全体において0.2±0.7%であり,北部圏域と東部圏域が-0.6%と-0.9%と減少に転じていた。軽度要介護認定率の変化量との関連については,指導士認定率と有意な負の相関を認めた(r=-0.762,p=0.028)。
【結論】
尾道市におけるシルバーリハビリ体操事業は事業開始から6年目となり,各地域で活動する指導士も年々増加している。小澤ら(2014)は,茨城県における指導士活動状況と軽度要介護認定率との関連を調査し,軽度要介護認定率と指導士数や教室開催数,参加者数は有意な負の相関があったと報告している。本研究においても軽度要介護認定率の変化量と指導士認定率に有意な負の相関関係を認め,2圏域では変化量が減少していた。このことから,シルバーリハビリ体操事業開始前に比べ軽度要介護認定率の増加を抑制している可能性が示唆された。しかし,本研究ではその要因の分析までは出来ていないため,各圏域の介護給付費やその内容なども調査に加えた検討が必要である。

【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は演者所属の研究倫理委員会の承認を受けた(承認番号:第17MH067号)。尾道市の協力を得て抽出した各データには,個人を特定できる内容は含まれないように配慮して実施した。