第6回日本地域理学療法学会学術大会

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ポスター

ポスター2

[P] ポスター2

Sat. Dec 14, 2019 4:30 PM - 5:30 PM Poster venue (East Building 3rd floor, D Conference Room)

[P-35] 介護予防体操により高齢者の体組成と運動機能は変わるか?

*佐川 達哉1、石原 忠1、吉本 紘平1、井上 瑛子1、原口 辰也1、藤咲 祐子1、内田 靖1、渡部 均1、坂口 裕介1、森山 俊男1 (1. 栃木県医師会塩原温泉病院)

Keywords:バランス、筋力、骨格筋量

【はじめに・目的】
栃木県那須塩原市では、「地域づくり型介護予防事業」として、2016年5月より自治会単位にて「いきいき百歳体操」を導入し、週1回、介護予防体操を実施している。いきいき百歳体操は、高知県高知市にて開発され、主に下肢筋力とバランス能力向上を目的とした構成となっている。滝本らは、体操によって下肢筋力、Timed Up and Go test(以下、TUG)の向上を認めたと報告している。このように体操による効果を示した研究は多数行なわれており、主に体操実施前後の運動機能の変化を捉えた報告が多い。しかし、体組成、特に骨格筋量(以下、SMI)の変化と運動機能を合わせて比較した報告は少ない。そこで本研究では、地域在住高齢者を対象とし、体操実施前後の運動機能及び体組成の変化を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は2017年1月~2019年4月の期間に那須塩原市塩原地区の各公民館で行われる介護予防体操に参加し、体組成並びに運動機能測定に同意が得られた65歳以上の高齢者90名(男性24名、女性66名)中、初回測定、6ヵ月後再測定のいずれにも参加した31名76.4歳±8.1(男性12名78.5歳± 10.9、女性19名75.0歳±5.7)とした。体組成はinbody S10を使用し、背臥位にて測定した。測定値において、体格差の影響を除外するためSMI、BMI、体脂肪率を採用した。運動機能の指標として、30秒椅子立ち上がりテスト(以下、CS-30)、TUG、握力を測定した。測定項目は全て統計処理に使用し、男女毎に各項目を比較した。統計手法は、Wilcoxonの符号付き順位和検定を用い、統計ソフトはSPSS ver.18を使用した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
男女ともBMI、体脂肪率、握力に有意差は認めなかった。男性ではSMI(p=0.012)、CS-30(p=0.033)に有意差を認め、TUG(p=0.05)は向上傾向がみられたが、有意差は認めなかった。女性ではSMIに有意差を認めず、CS-30(p=0.007)、TUG(p=0.001)にて有意差を認めた。
【結論】
谷本らは、男性の場合20代以降下肢筋量は著明に減少すると報告しており、男性の結果から、筋量増加に伴い筋力が向上したと考えられる。相馬らは、下肢筋力とCS-30、TUGは相関があると報告しており、男性のTUGに向上傾向がみられたことから、筋力向上がバランス向上に効果を示した可能性がある。女性においても筋量は維持されていると考えられ、動的バランスの指標であるCS-30、TUGに有意な向上がみられた。TUGは転倒との関連が数多く報告されており、島田らは、女性でかつ高齢になると遅くなると報告している。また女性は骨粗鬆症になりやすく、骨折のリスクが高いといわれている。女性の結果から、動的バランスが向上し、骨折による要介護状態への移行が予防できる可能性が示唆された。以上のことから、体操実施により男性では筋量及び筋力向上、女性では動的バランス向上の効果が見られ、男女とも要介護状態への移行を予防できる可能性が示唆された。

【倫理的配慮、説明と同意】
対象者には不利益が生じないよう、初回測定時に、参加及び撤回の自由、体操実施に向けた主治医の承諾の必要性、体力測定時のリスク、個人情報保護に関する説明も含め、文書及び口頭にて説明を行ない、文書への署名をもって同意を得た。尚、本研究は塩原温泉病院倫理委員会にて承認を得ている。