第6回日本地域理学療法学会学術大会

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ポスター

ポスター2

[P] ポスター2

Sat. Dec 14, 2019 4:30 PM - 5:30 PM Poster venue (East Building 3rd floor, D Conference Room)

[P-38] 若年高次脳機能障害者における生活全体の活動把握の必要性
―通所施設で関わる理学療法士として求められる視点―

*泉 真里恵1、大村 静香1、原岡 由維1、林原 亜弓1、山田 久美子1、中務 飛鳥1、冨田 昌吾1、石垣 智也2 (1. 特定非営利活動法人寝屋川市民たすけあいの会、2. 名古屋学院大学リハビリテーション学部理学療法学科)

Keywords:通所施設、就労、高次脳機能障害

【はじめに】
若年の高次脳機能障害者を長期にわたり支援できるような社会資源は限られており、リハビリテーション(以下、リハビリ)専門職が関わる機会は減少していく。今回、回復期病院退院後に家族の積極的な支援を受け、約1年間かけて身体・認知機能面の改善を認めた症例を経験した。本報告の目的は、生活期リハビリにおいて生活全体の活動を把握する必要性について考察することである。
【症例紹介と経過】
20代女性。看護師の国家試験後、大学卒業前のX年細菌性髄膜炎後に右側頭葉皮質下出血・くも膜下出血発症。X年+5ヶ月回復期病院転院、X+1年自宅退院。家族と同居し主な介助者は母親であった。退院と同時期に通院リハビリおよび当施設通所を開始した。通所開始時の状態として、バレー徴候と指鼻試験ともに陽性、立ち直り反応やステップ反応は見られなかった。認知機能はMini-Mental-State-Examination(以下、MMSE)24点、かな拾いテスト(以下、かな拾い)Aの見落とし率26.9%、かな拾い-Bは20%、Trail-Making-Test(以下、TMT)Aは230秒、TMT-Bは299秒であった。移動は主に2本杖を使用、転倒が多く日常生活動作(以下、ADL)は各動作に近位見守りが必要な状態であった。FIMは運動項目75点、認知項目26点であり、応用的ADLはいずれも未実施であった。生活のなかでの活動量は、2時間の当施設通所利用を週2-3回、内容は個別の運動療法と間違い探し等の認知的なプリント課題、古布の裁断等の簡単な軽作業であった。それ以外に月2回程度の通院リハビリと、病前通っていた茶道やバレエや料理教室といった習い事に不定期に参加し、ほぼ毎日家族の介助で外出していた。通所時には本人とメモリーノートの確認を行い、1日に3ヶ所出かけた翌日等は過度な疲労感がみられることなどの確認をし、活動量を適正化するように本人や家族へ伝える等の関わりを行った。

【結果】
生活状況は大きく変わらずに経過した。X+2年4ヶ月の状態として、バレー徴候と指鼻試験の改善、立ち直り反応とステップ反応の出現を認めた。MMSE28点、かな拾い-A見落とし率5.9%、かな拾い-Bは18.1%、TMT-Aは145秒、TMT-Bは283秒であった。移動はT字杖1本使用で遠位見守りとなり、FIM運動項目77点、認知項目は27点、応用的ADLは家事の手伝い等を開始・継続した。また、毎日の外出は継続していたが、通所時に疲労感がみられることは軽減していた。活動内容として、自身で歩数管理し運動量確保に努め始め、本人の強い希望である看護師としての就労にむけて看護師国家試験の予備校に通い始めるなど、能動的な活動内容が増加した。

【結論】
回復期病院退院後にリハビリ専門職が介入する機会は減少したが、約1年をかけて身体・認知機能、生活活動ともに改善を認めた。受動的にではあるものの多様な活動を保ちつつ生活するなかで、これら機能面の変化や、本人の希望する能動的な活動への意欲が認められたと考えられる。

【倫理的配慮、説明と同意】
本報告に際して、プライバシーの保護には十分に配慮し、症例本人と家人に対して口頭と書面による十分な説明と承諾を得ている。