第6回日本地域理学療法学会学術大会

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ポスター2

[P] ポスター2

2019年12月14日(土) 16:30 〜 17:30 ポスター会場 (東館3階 D会議室)

[P-46] 高齢者の栄養状態は転倒予防の指標となり得るか

*青山 満喜1,2、伊藤 三幸3、熊谷 旬一郎3、上之郷 由希4 (1. 常葉大学保健医療学部理学療法学科、2. 名古屋大学大学院地域在宅医療学老年科学、3. 伊勢志摩リハビリテーション専門学校、4. 伊勢医心会神路園)

キーワード:最大周径、簡易栄養状態評価表、転倒歴

【はじめに・目的】高齢者のサルコぺニアやフレイルが転倒を惹起することは,周知の事実であり,低栄養状態とサルコぺニア,フレイルの関連も唱えられて久しい.
今回,高齢者の栄養状態が転倒予防の指標になり得るか検討することを目的とし,簡易栄養状態評価表(Mini Nutritional Assessment-Short Form;MNA-SF)と運動機能,上腕最大周径,下腿最大周径に着目し検討した.

【方法】対象者は愛知県と三重県の地域在住高齢者248名(平均年齢75.6歳)である.
対象者のMNA-SF, 転倒歴と厚生労働省の「基本チェックリスト」を調査するとともに,年齢,身長,体重,体格指数(Body Mass Index;BMI),上腕最大周径,下腿最大周径,5m歩行時間を計測した.
対象者を性別で2群に分け,MNA-SFの得点を従属変数,「基本チェックリスト」の運動機能項目を独立変数として,その結果を検討した.なお,有意水準は0.05未満とした.

【結果】統計解析にはSPSS21.0を使用し,ロジスティック回帰分析を用いた.その結果,男性においては,MNA-SFと過去1年間の転倒歴との間に有意差を認めた(p<0.05).
しかし女性では,MNA-SFと過去1年間の転倒歴との間に有意差を認めなかった.
また男女ともにMNA-SFとBMIの間に有意差を認めた(p<0.01).
しかしながら,男女ともMNA-SFと上腕最大周径,下腿最大周径との間には有意差を認めなかった.

【結論】高齢者の栄養状態は,サルコぺニアやフレイルに結び付く要因の一つである.今回,高齢者の栄養状態が転倒予防の指標になり得るか検討した結果,男性の場合はMNA-SFと転倒歴が関係していることが明らかとなった.
本結果は,高齢の男性においては,栄養状態を把握することも転倒予防の指標のひとつになり得ることを示している.
MNA-SFは,65歳以上の高齢者の栄養スクリーニングと栄養アセスメントに用いられ,簡便に実施できる評価法である.理学療法士も評価時にリハビリテーションの栄養スクリーニングを行うという心構えをもつことは,運動機能のみならず別の観点からも転倒予防を勘考する際の一助になると考える.

【倫理的配慮、説明と同意】
本調査および測定は,ヘルシンキ宣言を遵守し,研究倫理委員会で承認された後に実施した.調査・測定にあたり,対象者には書面を用いて口頭で説明した.また,個人が特定されないかたちで学会において発表し得ることも説明し,これら全ての説明に対する同意は書面で得た.