第6回日本地域理学療法学会学術大会

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ポスター

ポスター2

[P] ポスター2

Sat. Dec 14, 2019 4:30 PM - 5:30 PM Poster venue (East Building 3rd floor, D Conference Room)

[P-48] 通所リハビリテーション利用者の身体的・心理的・社会的要因およびQOLの5年後の変化

*新岡 大和1 (1. 青森県立保健大学理学療法学科)

Keywords:QOL、縦断調査、通所リハビリテーション

【はじめに・目的】
通所リハビリテーション(通所リハ)の平均利用期間は4年程度であり,この間に身体機能・心理状態・社会機能およびQuality of life(QOL)の変化が予想されるため,その変化に応じた支援が必要である.しかし,これまで通所リハ利用者を追跡した報告は移動能力を中心としたものが多く,様々な要因を包括的に調査したものは少ない.そこで本研究は通所リハ利用者を5年間追跡し,身体的・心理的・社会的要因およびQOLの経年変化について明らかにすることとした.
【方法】
調査時期はベースライン調査(BL)が2014年3月から10月,フォローアップ調査(FU)が2019年3月から5月で,調査施設は埼玉県にある6つ介護老人保健施設の通所リハであった.対象者の取り込み基準は本研究への同意が得られること,除外基準は60歳未満,Mini mental state examination(MMSE)が21点未満,調査・測定方法が理解できないこととした.BLの対象者は123名で,FUが可能であった解析対象者は58名(男性17名,女性41名),平均年齢は80.01±11.88歳であった.調査項目は身体機能評価として30秒椅子立ち上がりテスト(CS-30),Numerical Rating Scaleを用いた疼痛の程度,心理状態評価として老年期うつ病評価尺度短縮版,高齢者向け生きがい感スケール,社会機能評価として日本語版Lubben Social Network Scale短縮版(LSNS-6),QOL評価として生活満足度尺度K,MOS 8-Item Short-Form Health Surveyのサマリースコア(PCS,MCS),基本情報として年齢,性別,要介護度,MMSE,趣味の有無とした.統計解析は始めに連続変数の正規性を確認するためにShapiro-Wilk検定を実施した.次にBLとFUの各変数の差を明らかにするために連続変数はWilcoxonの検定,離散変数はFisherの正確確率検定を実施した.また,Fisherの正確確率検定において有意な差を認めた変数についてはφ係数を確認した.これらの解析はR2.8.1(CRAN,freeware)を用い,有意水準は5%とした.
【結果】
BLとFUの群間比較の結果,CS-30,LSNS-6,MCS,MMSEに有意な差を認めた.これらの変数値はBLよりFUで低下し,CS-30は12.5回(以下,全て中央値)から10回,LSNS-6は21点から16点,MCSは49.31点から47.31点であった.また,趣味の有無に有意な差を認めたが,φ係数は0.292と低かった.
【結論】
5年間追跡可能であった通所リハ利用者は,下肢筋力(CS-30),ソーシャルネットワーク(LSNS-6),認知機能(MMSE),健康関連QOLの精神的健康(MCS)が低下した.通所リハではこれらの経年変化を念頭に置いた支援が必要である.一方,身体的・心理的・社会的要因およびQOLについて向上したものはなかった.

【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は埼玉県立大学倫理審査委員会の承認(25527)ならびに弘前大学大学院保健学研究科倫理委員会の承認(2018-055)を受けて実施した.また,対象者には書面と口頭で説明し,同意を得た上で実施した.