第6回日本地域理学療法学会学術大会

Presentation information

ポスター

ポスター2

[P] ポスター2

Sat. Dec 14, 2019 4:30 PM - 5:30 PM Poster venue (East Building 3rd floor, D Conference Room)

[P-49] 地域在住高齢者における転倒等の経験と健康関連QOLおよび運動機能との関係

*廣瀬 浩昭1、弓岡 まみ1、玉田 良樹1、岡山 裕美1、田中 雅侑1、奥村 裕1、金澤 佑治1、山野 薫1、奥 壽郎1、武田 功1 (1. 大阪人間科学大学人間科学部理学療法学科)

Keywords:転倒、健康関連QOL、地域在住高齢者

【はじめに、目的】近年、健康寿命延伸への関心が高まり、地域在住高齢者に対する各種事業が各地で開催されている。一般に、高齢者にとって転倒は、骨折等の外傷につながり、重度な機能障害や長引く活動制限を生じさせ、健康関連QOL(Health-related quality of life:以下HRQOL と略す)を低下させる。しかしながら、骨折には至らなかった転倒経験やヒヤリハットの経験とHRQOLの関係については、先行研究を渉猟したが明らかになっていない。本研究は、地域在住高齢者を対象として転倒、ヒヤリハットの経験とHRQOLおよび運動機能の関係を明らかにして、今後の地域住民ヘルスプロモーション事業への示唆を得ることを目的とした。
【方法】大阪府摂津市在住の地域住民に対して実施した体力測定イベントに参加した100名のうち、移動に介助の必要な者、骨折の既往がある者、65歳未満の5名を除いた高齢者95名(平均年齢74.2歳)を対象とした。本研究は、HRQOLの評価にSF-36v2日本語版を用い、対象者の属性と転倒とヒヤリハットの経験等を調査するために質問紙調査を実施した。調査終了後、SF36v2のデータはスコアリングプログラムに入力し、下位8尺度(身体機能、身体役割、身体の痛み、一般的健康認知、活力、社会的機能、情緒的機能、精神的健康)のスコアから計算された国民標準値に基づいたNBS(Norm-based Scoring)得点を算出した。また、運動機能の測定項目は5回連続立ち座り時間、最大1歩幅、TUG、5m最速歩行時間、歩幅、棒反応時間、開眼片脚立位時間、握力、等尺性膝伸展筋力、足趾把持力を測定した。統計学的検討には、一元配置分散分析と多重比較法を用い、有意水準を 5%とした。なお、SF-36v2日本語版は特定非営利活動法人健康医療評価研究機構とライセンス契約を締結した上で使用した。
【結果】転倒経験では、「転倒あり」は8名(8.4%)、「転倒なし、ヒヤリハットあり」は21名(22.1%)、「転倒なし、ヒヤリハットなし」は66名(69.5%)であった。結果は、下位8尺度で「転倒なし」と比べ他2群が低値を示す傾向があり、「身体の痛み」に有意差が認められた(p<0.05)。一方、運動機能すべてで「転倒あり」と比べ他2群が良値を示す傾向があり、開眼片脚立位時間に有意差が認められた(p<0.05)。
【考察、結論】本研究の結果、骨折の既往がない者でも、転倒やヒヤリハットの経験はHRQOL、特に「身体の痛み」の低下に関係していること、運動機能では特に開眼片脚立位時間と転倒と関係していることが示唆された。引き続き、本研究の結果に検討を加え、転倒予防を含めた地域住民ヘルスプロモーション事業を展開していきたい。
本研究は薫英研究費助成を受けたものである。本研究にご協力いただいた参加者および協力者の皆様に深謝いたします。なお、本研究における利益相反(conflict of interest: COI)はありません。

【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は、大阪人間科学大学研究倫理委員会における研究倫理審査で承認(2017-6)された後に実施した。また、対象者に対して、事前に研究の意義および目的、方法、倫理的配慮(起こりうる危険や不利益等、個人情報の保護、インフォームド・コンセントの手続き)について書面と口頭で説明を行い、書面で同意を得た。