[P-50] 要介護者の家族における介護負担に着目した退院後訪問調査
キーワード:介護負担、退院後訪問、退院支援
【はじめに、目的】
理学療法士が行う退院支援は、患者や家族が具体的な在宅生活がイメージ出来る必要があり、その支援は在宅生活を支える家族も対象となる。要介護の担当患者が自宅退院を目指すにあたり家族へ介助指導を行い、その経験から介護負担を考えた。本調査の目的は、退院支援を振り返ること、回復期病棟から自宅退院した要介護者を支える家族の介護負担を調査することである。
【方法】
対象は、脳梗塞を発症し当院に5ヵ月間入院した80歳代の女性と娘であり、退院を機に2人暮らしとなった。症例は左片麻痺(Brunnstrom Recovery stageⅡ-Ⅱ-Ⅲ)を呈し、機能的自立度評価表は21点、介護認定は要介護5であった。退院に向けて主介護者の娘と別居の息子へ介助指導(理学療法では起居動作、移乗動作、車椅子操作と車椅子での段差およびスロープの昇降方法を担当)を行い、入院中より家族介助を行っていた。退院後訪問は、退院1カ月後と2カ月後に実施した。娘に対しZarit介護負担尺度日本語版(J-ZBI)を用いて介護負担を評価し、生活や介護の様子は聞き取りにて調査した。
【結果】
症例は、週に6日の通所系の介護保険サービスを中心に利用し在宅生活を継続していた。理学療法で介助指導を移乗動作に関して、2カ月後の訪問において介助量が増加していたが娘の介助で行えていた。J-ZBIは2カ月の平均が総得点16.5点、下位尺度はPersonal strain(PS尺度)10.5点、Role strain(RS尺度)2点であり、下位尺度が総得点に占めた割合はPS尺度63.6%、RS尺度12.1%であった。聞き取りより、娘自身しか介護者がいないため「頼りにされている」と感じており、項目8と14では点数が高かった。介護による拘束感については「自分の時間を確保できている」と答えた。
【結論】 本症例の家族介助者の負担感はJ-ZBI16.5点であり、先行研究の区分を参考にすると負担感は20点以下であり軽度負担感に分類された。下位尺度は、介護そのものから生じる負担感を示すPS尺度が63.6%、介護を始める以前の生活が行えなくなることにより生じる負担感を示すRS尺度が12.1%であった。聞き取りで聴取されたように、介護動作や介護自体を負担に感じているのではなく、介護者が一人であることにより「母に頼られている」「自分しかいない」という精神的負担を感じていた。加えて、介護者自身の時間は確保できていると答えたように、RS尺度の割合は低く、通所サービスの利用が家族の介護負担軽減に繋がることを示す結果となった。通所サービスの利用により要介護者と介護者の離れる時間を作ることで、介護負担感を軽減することが出来るため、理学療法士として外出支援は重要であると報告されている。要介護者を支える家族への退院支援において、入院中より家族の介護経験を重ねること、精神的負担を考慮し外出方法と機会を確保することで退院後に家族の介護負担を軽減することが出来ると示唆された。
【倫理的配慮、説明と同意】
本調査はヘルシンキ宣言に基づいて実施した。倫理的配慮として、対象となる患者家族に対し当院入院中より本調査の趣旨と内容、得られたデータは研究以外の目的には使用しないこと、個人情報の取り扱いについては、プライバシーを侵害しないよう匿名化し情報の漏えいに注意することについて説明し同意を得たうえで参加の協力を求めた。任意の参加であるため、調査途中であっても個人の意思でいつでも中断でき、それにより一切の不利益を受けないことを十分説明し、対象者の家族より口頭ならびに書面にて同意を得たうえで実施した。なお、本調査は当院倫理委員会の承認を得て実施した。
理学療法士が行う退院支援は、患者や家族が具体的な在宅生活がイメージ出来る必要があり、その支援は在宅生活を支える家族も対象となる。要介護の担当患者が自宅退院を目指すにあたり家族へ介助指導を行い、その経験から介護負担を考えた。本調査の目的は、退院支援を振り返ること、回復期病棟から自宅退院した要介護者を支える家族の介護負担を調査することである。
【方法】
対象は、脳梗塞を発症し当院に5ヵ月間入院した80歳代の女性と娘であり、退院を機に2人暮らしとなった。症例は左片麻痺(Brunnstrom Recovery stageⅡ-Ⅱ-Ⅲ)を呈し、機能的自立度評価表は21点、介護認定は要介護5であった。退院に向けて主介護者の娘と別居の息子へ介助指導(理学療法では起居動作、移乗動作、車椅子操作と車椅子での段差およびスロープの昇降方法を担当)を行い、入院中より家族介助を行っていた。退院後訪問は、退院1カ月後と2カ月後に実施した。娘に対しZarit介護負担尺度日本語版(J-ZBI)を用いて介護負担を評価し、生活や介護の様子は聞き取りにて調査した。
【結果】
症例は、週に6日の通所系の介護保険サービスを中心に利用し在宅生活を継続していた。理学療法で介助指導を移乗動作に関して、2カ月後の訪問において介助量が増加していたが娘の介助で行えていた。J-ZBIは2カ月の平均が総得点16.5点、下位尺度はPersonal strain(PS尺度)10.5点、Role strain(RS尺度)2点であり、下位尺度が総得点に占めた割合はPS尺度63.6%、RS尺度12.1%であった。聞き取りより、娘自身しか介護者がいないため「頼りにされている」と感じており、項目8と14では点数が高かった。介護による拘束感については「自分の時間を確保できている」と答えた。
【結論】 本症例の家族介助者の負担感はJ-ZBI16.5点であり、先行研究の区分を参考にすると負担感は20点以下であり軽度負担感に分類された。下位尺度は、介護そのものから生じる負担感を示すPS尺度が63.6%、介護を始める以前の生活が行えなくなることにより生じる負担感を示すRS尺度が12.1%であった。聞き取りで聴取されたように、介護動作や介護自体を負担に感じているのではなく、介護者が一人であることにより「母に頼られている」「自分しかいない」という精神的負担を感じていた。加えて、介護者自身の時間は確保できていると答えたように、RS尺度の割合は低く、通所サービスの利用が家族の介護負担軽減に繋がることを示す結果となった。通所サービスの利用により要介護者と介護者の離れる時間を作ることで、介護負担感を軽減することが出来るため、理学療法士として外出支援は重要であると報告されている。要介護者を支える家族への退院支援において、入院中より家族の介護経験を重ねること、精神的負担を考慮し外出方法と機会を確保することで退院後に家族の介護負担を軽減することが出来ると示唆された。
【倫理的配慮、説明と同意】
本調査はヘルシンキ宣言に基づいて実施した。倫理的配慮として、対象となる患者家族に対し当院入院中より本調査の趣旨と内容、得られたデータは研究以外の目的には使用しないこと、個人情報の取り扱いについては、プライバシーを侵害しないよう匿名化し情報の漏えいに注意することについて説明し同意を得たうえで参加の協力を求めた。任意の参加であるため、調査途中であっても個人の意思でいつでも中断でき、それにより一切の不利益を受けないことを十分説明し、対象者の家族より口頭ならびに書面にて同意を得たうえで実施した。なお、本調査は当院倫理委員会の承認を得て実施した。