第6回日本地域理学療法学会学術大会

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ポスター

ポスター2

[P] ポスター2

Sat. Dec 14, 2019 4:30 PM - 5:30 PM Poster venue (East Building 3rd floor, D Conference Room)

[P-52] 要介護高齢者における病院から施設入所後の立位歩行時間の変化に関連する要因

*岡前 暁生1、池添 冬芽2、金井 瑞希1、松本 匠平1、和田 陽介3、道免 和久4 (1. 兵庫医科大学ささやま医療センター リハビリテーション室、2. 京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻、3. 兵庫医科大学ささやま医療センター リハビリテーション科、4. 兵庫医科大学 リハビリテーション医学教室)

Keywords:要介護高齢者、身体活動時間、施設入所

【はじめに・目的】
在宅生活などを見据えた急性期後の病院と介護老人保健施設(以下;施設)での身体活動を把握することは非常に重要である。特に施設では臥床時間が長く,座っていてもテレビをみているか何もしていない状態が多くの時間を占めているため,立位・歩行の活動的な時間を増やすことが必要とされているが(Ouden et al.; 2015),これまで病院から施設へ移行した際の身体活動の変化については十分な検討がなされていない。そこで本研究では,急性期後の病院から施設に入所した要介護高齢者を対象に身体活動時間を測定し,病院と施設での身体活動時間の変化および活動時間の変化に関連する要因を検証することを目的とした。
【方法】
対象は平成30年4月から平成31年4月の間に当院回復期リハビリテーション病棟もしくは地域包括ケア病棟から併設の施設へ入所した要介護高齢者16名(平均年齢84.0±7.5歳)とした。病状が不安定な者や施設再入所の者は対象から除外した。身体活動時間はA-MES(Solid Brains社製)を用いて,体幹と大腿部の2か所に多機能加速度センサーを貼付することにより,一日あたりの臥位・座位・立位・歩行の総時間(分)を測定した。身体活動時間は病院と施設でそれぞれ2日間測定した。また,日常生活動作(以下;ADL)はFIMを用いて評価した。身体機能としてTimed Up & Go Test(以下;TUG),膝伸展筋力,5回chair stand(以下;5CS)を測定した。なお,病院での測定は概ね退院の1週間前,施設での測定は概ね入所1週間後に測定した。病院と施設の各時間はWilcoxon検定を用いて比較した。病院と施設入所後の総立位歩行時間の変化に関連する要因を調べるため,病院と比べ施設で総立位・歩行時間が増加した群と低下した群に分類し,群を従属変数,年齢,ベースライン時(病院)のFIM(運動項目,認知項目),TUG,膝伸展筋力,5CS,およびこれらの変化量を独立変数とした単変量ロジスティック回帰分析を行った。
【結果】
1日あたりの総臥位時間は,施設(813±294分)が病院(982±211分)と比べ有意に短く (p<0.01),総座位時間は施設(584±275分)が病院(413±192分)と比べ有意に長かった (p<0.01)。総立位・歩行時間は病院(37±27分)と施設(38±43分)で有意差はみられなかった。総立位・歩行時間が増加した群と低下した群の2群を従属変数とした単変量ロジスティック回帰分析の結果, FIMの認知項目の変化量のみ有意な関連要因(オッズ比:7.419,95%信頼区間:1.008-54.596,p=0.049)として抽出された。
【結論】
病院と比べ施設では理学療法士が直接介入する時間が短くなる。本研究の結果,病院と比べて施設での立位歩行時間が増加した要因として,身体機能の向上よりも認知機能面の向上の影響が大きいことが示唆された。

【倫理的配慮、説明と同意】
研究対象者には研究用のIDを割振り,氏名と研究用IDとの対応表を作成した。元データからは,氏名等は削除した。対応表のファイルにはパスワードを付けポータブルHDDに保存し鍵のついたキャビネットで,厳重に保管した。本研究に係わるすべての研究者は,「ヘルシンキ宣言」および「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」を遵守して実施した。本研究については説明文書用いて、口頭で説明を行った。対象者が認知機能の低下などの理由で理解や同意を得ることが難しい場合は、その家族を代理人としてインフォームド・コンセントを行った。