第6回日本地域理学療法学会学術大会

Presentation information

ポスター

ポスター2

[P] ポスター2

Sat. Dec 14, 2019 4:30 PM - 5:30 PM Poster venue (East Building 3rd floor, D Conference Room)

[P-56] 一症例から学んだ、オリエンテーションと生活期との連携の重要性
退院後、自宅生活における患者の主体性を考えて

*寺島 一希1 (1. 金沢医科大学氷見市民病院)

Keywords:生活機能、生活期リハビリテーション、回復期リハビリテーション

【はじめに】
今回、回復期リハビリテーション病棟(以下:回リハ)退院後、訪問リハを利用したが、在宅生活を送る中で次第に歩行パフォーマンスが低下した右片麻痺の一症例について、本人の訴えをふまえて、オリエンテーションや生活期との連携の重要性について考察し報告する.
【方法】
症例は脳幹梗塞で入院となった70代男性.入院前はADL全自立.生活も活動的で卓球や自宅から700m程度離れた場所まで散歩をしていた.
○自宅退院をX日として、X-115日入院、X-24日回復期リハ転棟.
退院時、BRS:上下肢Ⅴ.歩行は軽度分回し歩行残存したが、連続200m程度であれば下腿三頭筋や上肢の筋緊張亢進もなく、病棟内ADL自立となった。本人には歩行距離に応じて筋緊張が上がりやすいため歩きすぎには注意するように指導し、筋緊張の確認と屋外移動の自立を目標に訪問リハの導入に至った.訪問リハへは機能に加えて、本人が頑張りやすい性格であることや歩行時に筋緊張が上がりやすいことを申し送りした.
【結果】
○X+12日週1回訪問リハ開始、X+194日訪問リハ終了
退院後、本人は「たくさん歩けばよくなる」と考えおり、できるだけ長い距離を歩く事を心がけ屋外を休みながら1日5000~8000歩程度歩いていていた.その頃から筋緊張の亢進により、本人も歩きにくさを自覚していた.
目標としていた場所への移動を獲得したため、訪問リハ終了予定であったが、歩容の修正を目的に継続の希望あり.短時間通所リハへ移行となる.
○X+223日短時間通所リハ開始
訪問リハ終了後も毎日5000歩ほど歩いていた.
X+542日、BRS:上下肢Ⅳ.回リハ退院時と比較して、下腿三頭筋や麻痺側上肢屈筋群の筋緊張亢進や体幹の回旋の消失、麻痺側遊脚期のknee actionの消失などみられており、跛行増悪していた.
本人は上手く歩けるようになりたいと希望あり.
【結論】
退院時のオリエンテーションで退院後の注意点を説明したが、理学療法士の「歩きすぎには注意して欲しい」という思いと、患者の「歩けば歩くほど歩行能力が向上する」という思いに相違があった.和田らによると退院した障がい者にとって「よくなる」は「元通り治る」に近い言葉であり、病気や障がいが無かった時を基準にして現在を比較するので、いつまでも「よくなっていない」と思っており、「もとに近い状態」を求めるようになると述べられている.本症例はリハを継続することに加え、自分で歩けば良くなると考えていたが、歩きすぎたことにより、筋緊張が亢進し歩行パフォーマンスが低下したのではないかと考える.
今回の症例ではオリエンテーションや訪問リハへの申し送りが乏しかった事で、セラピストの想定外の事が起こり、対処が不十分であった.オリエンテーションでは患者との思いを一致させるために、自宅での生活を想定して説明していく必要がある.それでも想定されない出来事は起こりうるため、生活期に関わる療法士への細かな申し送りや情報交換の必要性を感じた.

【倫理的配慮、説明と同意】
報告にあたり、ヘルシンキ宣言を遵守し,対象者に対して十分な説明を行い、同意を得ている.