第6回日本地域理学療法学会学術大会

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ポスター

ポスター3

[P] ポスター3

Sun. Dec 15, 2019 12:30 PM - 1:30 PM Poster venue (East Building 3rd floor, D Conference Room)

[P-60] 介護予防教室に参加する在宅高齢者の身体機能評価と時計描写テストの関係

*坂村 慶明1、常國 惠理奈1、河村 実咲子1、佐々木 晃一1 (1. 社会医療法人石州会 六日市病院 リハビリテーション室)

Keywords:在宅高齢者、介護予防、中山間地域

【目的】
当院は中山間の地域拠点病院で、自治体と協力して介護予防教室を開催している。教室では身体機能評価と簡便に実施できる時計描写テスト(以下、CDT)による、認知機能評価を行っている。今回、各身体機能評価とCDTの関係を検討したので報告する。
【方法】
65歳以上の地域在宅高齢者119名(男性12名、女性107 名、年齢81.9±5.3歳)を対象に身体機能評価として開眼片脚起立テスト、timed up & go test(以下、TUG)、5m歩行テスト、握力を計測した。開眼片脚起立テストおよび握力は左右側とも測定し、その最大値(秒およびkg)を代表値として採用した。また、認知機能評価としてCDTを実施し、Rouleau法により評価した。統計学的分析には、CDTの点数と開眼片脚起立テストおよび握力との関係についてSpearmanの順位相関係数を求めて検討した。有意水準は5% とした。
【結果】
CDTの点数と開眼片脚起立テスト、TUG、5m歩行テストで有意な相関関係を認めたが、CDTの点数と握力では有意な相関関係を認めなかった。
【結論】
認知機能正常者は認知機能低下者と比べて身体機能が高いことが多くの調査から明らかとなっている。今回の研究では開眼片脚起立時間が長い高齢者、TUGの速い高齢者、5m歩行テストでの最大歩行速度の速い高齢者は認知機能が高いとの結果となっていることから、これまでの調査を裏付けることができたと考える。これらの身体機能評価は多くの先行研究から転倒リスクとの関係を認めており、姿勢制御を必要とする評価と考える。CDTは被験者の構成能力や視空間能力、視覚イメージの再構成や遂行機能などの評価が可能である。姿勢制御には視覚入力が重要な役割を果たしており、CDTと開眼片脚起立時間に相関関係を認める結果になったと考える。一方、握力は総合的な筋力の指標とされているが、視覚入力を必要としない評価であるため、CDTと相関関係を認めなかったと考える。
運動器不安定症の定義は、高齢化に伴って運動機能低下をきたす運動器疾患により、バランス能力および移動歩行能力の低下が生じ、閉じこもり、転倒リスクが高まった状態とされている。今回の検討からCDTは身体機能低下の一指標となることが示唆された。高齢者は運動を継続することで認知機能が維持されるとの調査結果もあることから、地域で体操などを行う集いの場をつくり、専門職であるセラピストが支援を行うことで、地域在宅高齢者の身体機能の向上を図り、認知機能の維持に努め、生活の質を高めることが中山間地域に求められる介護予防事業であると考える。

【倫理的配慮、説明と同意】
倫理的配慮として、対象者には研究の趣旨と内容、得られたデータは研究目的以外に使用しないこと、個人情報の漏洩に注意することを文章で十分に説明し同意を得た。