[P-68] 訪問リハビリテーションでの環境適応アプローチ
-麻痺側上肢に対する知覚入力により手指巧緻動作、運動連鎖の発現を得た事例―
キーワード:機能改善、環境適応、運動連鎖
【はじめに】
今回、当施設訪問リハビリテーション利用中の脳梗塞後左片麻痺患者において、握り動作の獲得は得られているものの手指の巧緻動作が阻害されているため円滑なADL動作への参加が困難な症例を経験した。この症例に対して、訪問リハビリテーションでの環境を重視し、麻痺肢を作業環境に適応させることで有益な機能改善を得ることが出来たので報告する。
【評価・方法】
事例:80歳代女性 コミュニケーション能力問題なし 右脳梗塞後左片麻痺(発症後1年半経過) BRS上肢Ⅳ 手指Ⅲ 下肢Ⅳ~Ⅴ 左上下肢痺れ感(+) 起居動作、歩行に関しては室内レベルで自立しており、自宅内のADL上は問題なかった。屋外移動はT字杖あるいはシルバーカー歩行にて若干のふらつきが見られるものの良好に実施可能であった。訪問リハビリテーション利用開始時において、左手指動作は軽い握り・つかみ動作は可能であったが、手指の対立動作やスムーズな分離運動に乏しいため実用性は低く、家事やセルフケアへの麻痺肢の参加は見られなかった。治療プログラムとして麻痺側上肢の作業環境への適応を促すため、①両上肢を用いて新聞紙を丸める。②床に置いた新聞紙を麻痺側手指でまっすぐに千切る。の2点を実施した。実施期間は6か月間で、並行して実施時に「新聞紙を丸めているときの感じ方」や、「千切っているときの力加減」の聞き取りを行い、麻痺側上肢操作時の知覚情報を意識するよう指導した。また、操作性の向上に従って「千切られた新聞紙を結ぶ作業」もプログラムに追加した。
【結果】
BRS上肢Ⅳ→Ⅴ 手指Ⅲ→Ⅳ~Ⅴへと大きく改善した。当初、手指の巧緻動作に乏しく分離した作業に困難さが見られていたが、対象となる作業の知覚化を図りつつ意識づけを行うことで作業環境に適応させ、麻痺肢全体の機能改善を実現することが出来た。その結果、麻痺肢を参加させたうえでの余裕をもったセルフケアの実施が可能となった。それに付随して、畑仕事や庭の草取り等の屋外活動が積極的に実施可能となったことで、社会生活の改善を得ることができ利用者の高い満足感を頂くことに繋がった。
【結論】
新聞紙を丸めることや、千切る、結ぶなどの行為を動作の手掛かりとすることで、麻痺肢全体の運動連鎖を引き起こすことが可能となり麻痺肢の機能改善に繋がった。また、動作時の知覚情報をより具体的な情報としてアフォードしていったことで、より確実な動作の発現・習得に繋がったと考えられる。対象となる行為を遂行するための運動連鎖を引き起こすことを目的に、動作時の麻痺肢に対するアフォーダンスに注目した。加えて、正確な知覚情報を入力していった事が麻痺肢の運動学習を促進し、有益な機能改善に繋げることができたものと考察する。
【倫理的配慮、説明と同意】
今回の報告ついて、利用者に対してヘルシンキ宣言に基づき個人情報保護を尊重することを説明のうえ承諾を得た。
今回、当施設訪問リハビリテーション利用中の脳梗塞後左片麻痺患者において、握り動作の獲得は得られているものの手指の巧緻動作が阻害されているため円滑なADL動作への参加が困難な症例を経験した。この症例に対して、訪問リハビリテーションでの環境を重視し、麻痺肢を作業環境に適応させることで有益な機能改善を得ることが出来たので報告する。
【評価・方法】
事例:80歳代女性 コミュニケーション能力問題なし 右脳梗塞後左片麻痺(発症後1年半経過) BRS上肢Ⅳ 手指Ⅲ 下肢Ⅳ~Ⅴ 左上下肢痺れ感(+) 起居動作、歩行に関しては室内レベルで自立しており、自宅内のADL上は問題なかった。屋外移動はT字杖あるいはシルバーカー歩行にて若干のふらつきが見られるものの良好に実施可能であった。訪問リハビリテーション利用開始時において、左手指動作は軽い握り・つかみ動作は可能であったが、手指の対立動作やスムーズな分離運動に乏しいため実用性は低く、家事やセルフケアへの麻痺肢の参加は見られなかった。治療プログラムとして麻痺側上肢の作業環境への適応を促すため、①両上肢を用いて新聞紙を丸める。②床に置いた新聞紙を麻痺側手指でまっすぐに千切る。の2点を実施した。実施期間は6か月間で、並行して実施時に「新聞紙を丸めているときの感じ方」や、「千切っているときの力加減」の聞き取りを行い、麻痺側上肢操作時の知覚情報を意識するよう指導した。また、操作性の向上に従って「千切られた新聞紙を結ぶ作業」もプログラムに追加した。
【結果】
BRS上肢Ⅳ→Ⅴ 手指Ⅲ→Ⅳ~Ⅴへと大きく改善した。当初、手指の巧緻動作に乏しく分離した作業に困難さが見られていたが、対象となる作業の知覚化を図りつつ意識づけを行うことで作業環境に適応させ、麻痺肢全体の機能改善を実現することが出来た。その結果、麻痺肢を参加させたうえでの余裕をもったセルフケアの実施が可能となった。それに付随して、畑仕事や庭の草取り等の屋外活動が積極的に実施可能となったことで、社会生活の改善を得ることができ利用者の高い満足感を頂くことに繋がった。
【結論】
新聞紙を丸めることや、千切る、結ぶなどの行為を動作の手掛かりとすることで、麻痺肢全体の運動連鎖を引き起こすことが可能となり麻痺肢の機能改善に繋がった。また、動作時の知覚情報をより具体的な情報としてアフォードしていったことで、より確実な動作の発現・習得に繋がったと考えられる。対象となる行為を遂行するための運動連鎖を引き起こすことを目的に、動作時の麻痺肢に対するアフォーダンスに注目した。加えて、正確な知覚情報を入力していった事が麻痺肢の運動学習を促進し、有益な機能改善に繋げることができたものと考察する。
【倫理的配慮、説明と同意】
今回の報告ついて、利用者に対してヘルシンキ宣言に基づき個人情報保護を尊重することを説明のうえ承諾を得た。