[P-72] 対人関係トラブルのある発達障がい職員の一事例
通所リハビリ管理者による職場定着支援
キーワード:職場内ルールの明示化、発達障がい、職場定着支援
【はじめに】障害者雇用促進法の改正に伴い,法定雇用率は2.0%から2.2%へ引き上げられ,精神障がい者の人数が考慮されるなど,発達障がい者の就労は増加傾向にある.当院通所リハビリにおいても,発達障がい者の職員採用を決定し,職場定着について支援を行なってきた.当事例は,「学校から職場へ」の環境変化に伴い,職場内で発生した対人関係トラブルについて,管理者兼理学療法士の立場より支援を行ったものである.以下に,その内容を報告する.
【方法】事例:18歳,男性,精神障がい者等級2級,診断名:広汎性発達障がい,注意欠陥・多動性障がい,トゥレット症候群.知的障がい(-),経過:小学校6年生時に机のトンントン叩き,鼻いじり,咳払い出現.中学校1年生でチック症状増悪、学校内でもいじめに遭い不登校となる.家庭内暴力も出現.以降,精神科病棟への入院を繰り返す.その後,養護学校高等部に進学.入院と外来通院治療を継続しながら,高等部を卒業.同時に,当院通所リハビリに入職し,介護補助員として業務に従事する.就労時評価:日常会話時の過活動や衝動性あり.不注意によるミスは,意識下にて修正可能であった.まばたき等の運動チックに加え,鼻すすり,狂言症等の音声チックあり.言語理解良好,文章読解も可能だが,書字表出障がいがみられた(PCで代償可).勤勉で明るくひょうきん.自身の病態や症状について自己理解があり,障がい開示可能.業務内容は,給水・給食の補助業務,事務作業,間接的な集団体操の実施等であり,ルール化された事項やマニュアルに従い業務可能であった.支援内容:複数の対人関係トラブルについて,解決への支援を行った.1.同僚職員への不適切な呼称.事例には,自尊心を傷つける行為であることを説明し,理解を求めた.関係悪化が自身に及ぼす悪影響についても説明を行った.2.事務職員とのいさかい.職務内容が重なる部分があり,双方に混乱を招いた.お互いの職務内容を明確にし,接触の機会を最小限にした.3.事業所内・外での汚言症の出現.ジョブワーカーを含む支援者数名での会議を開催.情報の共有と社会性に関する指導を行った.特に,症状が出現しやすい職場での昼食時には,自己抑制を促した.1-3の指導時は,本人の理解が得られるまで説明を繰り返した.また,これらの経験から,対人関係における“職場内ルール”を設定し,行動化を促した.
【結果】新規対人関係トラブルなし.職場内でのチック症状消失.3年間の職場定着が可能となり,現在も継続就労中である.
【結論】通常教育を卒業した発達障がい者の場合,職場の規則やルール等に関する学習経験が少なく,その理由に関しても明確に理解されにくい.だが,対人関係という目に見えにくい問題であっても,職場内ルールの明示化を行い,その理解と行動化が得られることで,関係の改善は可能となる.発達障がい者の職場定着は,理学療法士としての知識や経験だけでなく,対人関係における支援方法を学ぶことで,より実践的な支援が可能となるものと考えられた.
【倫理的配慮、説明と同意】
本取り組みはヘルシンキ宣言に基づき,対象者に目的や方法,倫理的配慮について十分な説明を行い,書面にて承諾を得た.
【方法】事例:18歳,男性,精神障がい者等級2級,診断名:広汎性発達障がい,注意欠陥・多動性障がい,トゥレット症候群.知的障がい(-),経過:小学校6年生時に机のトンントン叩き,鼻いじり,咳払い出現.中学校1年生でチック症状増悪、学校内でもいじめに遭い不登校となる.家庭内暴力も出現.以降,精神科病棟への入院を繰り返す.その後,養護学校高等部に進学.入院と外来通院治療を継続しながら,高等部を卒業.同時に,当院通所リハビリに入職し,介護補助員として業務に従事する.就労時評価:日常会話時の過活動や衝動性あり.不注意によるミスは,意識下にて修正可能であった.まばたき等の運動チックに加え,鼻すすり,狂言症等の音声チックあり.言語理解良好,文章読解も可能だが,書字表出障がいがみられた(PCで代償可).勤勉で明るくひょうきん.自身の病態や症状について自己理解があり,障がい開示可能.業務内容は,給水・給食の補助業務,事務作業,間接的な集団体操の実施等であり,ルール化された事項やマニュアルに従い業務可能であった.支援内容:複数の対人関係トラブルについて,解決への支援を行った.1.同僚職員への不適切な呼称.事例には,自尊心を傷つける行為であることを説明し,理解を求めた.関係悪化が自身に及ぼす悪影響についても説明を行った.2.事務職員とのいさかい.職務内容が重なる部分があり,双方に混乱を招いた.お互いの職務内容を明確にし,接触の機会を最小限にした.3.事業所内・外での汚言症の出現.ジョブワーカーを含む支援者数名での会議を開催.情報の共有と社会性に関する指導を行った.特に,症状が出現しやすい職場での昼食時には,自己抑制を促した.1-3の指導時は,本人の理解が得られるまで説明を繰り返した.また,これらの経験から,対人関係における“職場内ルール”を設定し,行動化を促した.
【結果】新規対人関係トラブルなし.職場内でのチック症状消失.3年間の職場定着が可能となり,現在も継続就労中である.
【結論】通常教育を卒業した発達障がい者の場合,職場の規則やルール等に関する学習経験が少なく,その理由に関しても明確に理解されにくい.だが,対人関係という目に見えにくい問題であっても,職場内ルールの明示化を行い,その理解と行動化が得られることで,関係の改善は可能となる.発達障がい者の職場定着は,理学療法士としての知識や経験だけでなく,対人関係における支援方法を学ぶことで,より実践的な支援が可能となるものと考えられた.
【倫理的配慮、説明と同意】
本取り組みはヘルシンキ宣言に基づき,対象者に目的や方法,倫理的配慮について十分な説明を行い,書面にて承諾を得た.