[P-76] 訪問理学療法における保険外診療の試み
Keywords:保険外診療、高次脳機能障害、地域リハビリテーション
【はじめに】介護保険を中心とした訪問での理学療法では高齢者モデルを前提とすることから自宅生活が可能であるということに焦点が当てられることが多く、更に高次な行為(復職、自動車運転など)に関してはアプローチされていないケースも存在する。
現在の制度下における訪問での理学療法では「在宅での理学療法」という縛りがあり、自宅周辺の歩行練習でさえ指導が入ったケースも経験している。しかし、復職などを目標とした場合には当然のように職場までの歩行の可否なども含めて評価が必要であり、現在の制度下では必要であるにも係わらず不可能な場面も散見される。
今回、中途障害により高次脳機能障害を有し、自宅での調理などに困難を来した利用者に対し、ご家族との協議の下で保険外診療を組み合わせて理学療法を行ったケースに関して報告する。
【利用者情報】
F様、65才、女性。平成30年4月ご主人と米国旅行の擦過傷に食いバクテリア感染し、その後帰国。傷の消毒のためのヨードアレルギーにより低酸素脳症となった症例である。4カ月の治療とリハビリテーションを専門病院で行った。退院時所見としては、著しい麻痺はなく四肢の筋力低下と高次脳機能障害(覚醒、短期記憶、注意障害、構成課題、2重課題の遂行障害など)があった。
【経過】訪問での理学療法を開始した際に、ご主人の希望は病院で行われているようなリハビリテーションを保険外診療でも良いので可能な限り頻回に行う事であった。しかし、このようなアプローチは効果の面からも頻回に行うことがより良い効果を生み出すとは考えられず、60分2回/週の介護保険に基づいた介入からスタートした。その後、機能の改善に伴い介護支援専門員からデイサービスの利用の提案があったが、ご主人の希望に添う形で、在宅での役割を作ることを目的に調理実習を行うことになった。介護保険での訪問時に包丁の使い方、電子レンジの使用方法など調理実習に必要な動作を確認し、2回/月2時間の保険外診療での調理実習を行った。これらは目標と期間を明確にして、達成度合いをご本人やご家族に報告しながら随時プログラムを修正し行った。保険外診療開始時には介護支援専門員に計画を説明し、営利目的ではないことを理解していただいた後に行った。
6カ月の介入により、メニューの立案、調理などが出来るようになってきた。状況の再評価の後、次の目標として買い物にターゲットを絞り、自動車の運転の可否(川崎市中部リハビリテーションセンター在宅支援室のサポート)、徒歩での買い物の可否などの可能性を探り、より自立した生活の獲得に向けたサポートを立案中である。
【考察】保険外診療は営利目的と誤解されがちであるが、本事例のように地域リハビリテーションの理念を守りながら既存の保険ではまかなえないものを行うには有効な手段であると思われた。
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は当社の設ける倫理委員会の承認を得て、ヘルシンキ宣言に則って倫理的な配慮の基で行われた。
現在の制度下における訪問での理学療法では「在宅での理学療法」という縛りがあり、自宅周辺の歩行練習でさえ指導が入ったケースも経験している。しかし、復職などを目標とした場合には当然のように職場までの歩行の可否なども含めて評価が必要であり、現在の制度下では必要であるにも係わらず不可能な場面も散見される。
今回、中途障害により高次脳機能障害を有し、自宅での調理などに困難を来した利用者に対し、ご家族との協議の下で保険外診療を組み合わせて理学療法を行ったケースに関して報告する。
【利用者情報】
F様、65才、女性。平成30年4月ご主人と米国旅行の擦過傷に食いバクテリア感染し、その後帰国。傷の消毒のためのヨードアレルギーにより低酸素脳症となった症例である。4カ月の治療とリハビリテーションを専門病院で行った。退院時所見としては、著しい麻痺はなく四肢の筋力低下と高次脳機能障害(覚醒、短期記憶、注意障害、構成課題、2重課題の遂行障害など)があった。
【経過】訪問での理学療法を開始した際に、ご主人の希望は病院で行われているようなリハビリテーションを保険外診療でも良いので可能な限り頻回に行う事であった。しかし、このようなアプローチは効果の面からも頻回に行うことがより良い効果を生み出すとは考えられず、60分2回/週の介護保険に基づいた介入からスタートした。その後、機能の改善に伴い介護支援専門員からデイサービスの利用の提案があったが、ご主人の希望に添う形で、在宅での役割を作ることを目的に調理実習を行うことになった。介護保険での訪問時に包丁の使い方、電子レンジの使用方法など調理実習に必要な動作を確認し、2回/月2時間の保険外診療での調理実習を行った。これらは目標と期間を明確にして、達成度合いをご本人やご家族に報告しながら随時プログラムを修正し行った。保険外診療開始時には介護支援専門員に計画を説明し、営利目的ではないことを理解していただいた後に行った。
6カ月の介入により、メニューの立案、調理などが出来るようになってきた。状況の再評価の後、次の目標として買い物にターゲットを絞り、自動車の運転の可否(川崎市中部リハビリテーションセンター在宅支援室のサポート)、徒歩での買い物の可否などの可能性を探り、より自立した生活の獲得に向けたサポートを立案中である。
【考察】保険外診療は営利目的と誤解されがちであるが、本事例のように地域リハビリテーションの理念を守りながら既存の保険ではまかなえないものを行うには有効な手段であると思われた。
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は当社の設ける倫理委員会の承認を得て、ヘルシンキ宣言に則って倫理的な配慮の基で行われた。