第6回日本地域理学療法学会学術大会

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ポスター

ポスター3

[P] ポスター3

Sun. Dec 15, 2019 12:30 PM - 1:30 PM Poster venue (East Building 3rd floor, D Conference Room)

[P-77] 前頭側頭型認知症(FTLD)を併発した高齢筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者に対して、在宅生活維持を目指した一症例
在宅生活維持にあたっての地域ケアの課題

*友渕 充1 (1. 医療法人 順心会 前田クリニック)

Keywords:筋萎縮性側索硬化症、呼吸器管理、訪問看護ステーション

【はじめに、目的】前頭側頭型認知症(FTLD)を併発した高齢筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者に対して在宅介入する機会を得たので報告する。地域包括ケアシステムを構築する上での当地域の在宅生活維持にあたっての課題について考察する。【症例紹介】X年6月に大学病院受診し、ALS、FTLDと診断。7月には在宅療養目的にAクリニックの往診開始となり、9月には在宅酸素導入、11月には社会参加目的にデイサービスの利用開始となる。換気不全、喀痰困難に対し、12月末より、環境整備・呼吸リハビリテーションを目的に訪問看護ステーションB利用開始となる。【経過】X+1年の状態では、左手指の巧緻動作が困難となり、呼吸の拘束性障害がみられるもADLはほぼ自立していた。努力性呼吸であり、NPPV・HOT導入するもFTLDによる病態の理解不足により利用の認識が低い。介入の目的・目標は、一つ目に呼吸器への理解・呼吸機能の維持ができる事、二つ目にキーパーソンである妻の介護負担が少なくなる機能維持・環境整備を行う事、三つ目に認知機能面へのアプローチとして社会参加や自主的な動作維持を図る事とした。病状進行による呼吸苦の増加・妻の介護負担増・屋外歩行の希望に対して、医療・介護サービスで対応し、2年間本人・妻共に安定した在宅生活を送ることができた。しかし、夜間にトイレで転倒し、妻の介護不安が増大した。病状進行により排痰の必要性が高くなったことからショートステイでは対応困難となり自宅から離れた医療施設へのレスパイト入院となった。その後、在宅での喀痰困難が増え、妻の不安が更に増大し在宅生活困難となる。家族の決断もありレスパイト入院先の医療療養病棟へ入院となった。【まとめ】本症例では夜間転倒・排痰困難から介護者の不安が増大し在宅生活困難に繋がった。進行性の疾患より訪問時には動作に注意をはらい居室移動や、トイレをポータブルにするなど環境整備に関する提案は行っていたが、本人および家族の理解が得られず、機能低下に合わせた迅速な環境整備は困難であった。在宅生活を継続するための効果的な環境整備には至らなかった。呼吸器管理に関しては、介入当初よりカフアシストなどの機器の受け入れは良好であったが、家族による実施について指導が不十分となり、呼吸管理に対する妻の不安が増大した。機能低下を見越した喀痰吸引指導の早期導入が課題と考える。また、介護保険サービス下での呼吸器管理には限界がある。特にショートステイでは、夜間の人工呼吸器対応・吸引が問題であり、マンパワー不足・リスク管理の問題から受け入れ困難となった。医療行為の必要な疾患でも在宅生活が継続できる当地域でのケアシステムの構築が必要である。地域の各事業所との連携と共に、当法人でも介護施設で人工呼吸器の利用者を受け入れるにはどのような整備が必要であるか、現在の施設状態でどの程度の受け入れが可能かを検討していく必要がある。

【倫理的配慮、説明と同意】
本症例報告は、対象に症例報告の趣旨を十分に説明し、理学療法評価および経過について記載ならびに発表することに同意を得て実施した。