[P-79] 転倒恐怖感の低い反復転倒歴患者一症例に対する職場復帰への取り組み
転倒予防のための歩行速度ペーシング指導
キーワード:職場復帰、ペーシング指導、転倒予防
【はじめに】今回、転倒恐怖感の低い反復転倒歴患者一症例に対して転倒予防策として歩行速度のペーシングを実施し、職場復帰のための通勤能力獲得に至ったため報告する。
【症例紹介】症例は50代女性。腰部脊柱管狭窄症のためL4/L5部の開窓術およびL5/S1部のPLIFを施行。23年前に左L4/L5、14年前に右L4/L5部椎間板ヘルニアによる手術歴があった。術前からdrop footがあり、転倒を繰り返していた。術後もdrop footは残存し改善はみられなかった。14病日、回復期病棟転棟となり理学療法担当。初期評価では左股関節外転MMT3 、左足関節背屈MMT2、片脚立位R/L(秒):5/4、独歩にて10m歩行:6.9秒(測定終了直後転倒)、TUG-t:17.1秒、6分間歩行テスト(以下、6MD)は230m(3分頃から左足部が床に引っ掛かりはじめ、4分20秒時点で転倒し途中終了)。6MDでの歩行速度は約3.1㎞/hであった。歩行観察では左立脚期で骨盤動揺およびdrop footがみられた。転倒恐怖感の評価であるModified Falls Efficacy Scale(MFES)は126/140であり、転倒を繰り返していたにもかかわらず恐怖感はほとんどなかった。症例の特徴として「前に人がいると抜かしたくなる」、「こけてでも杖や装具を使わずに外出します」など転倒に対して悲観することはなく楽観的な発言がみられた。症例のニーズは杖や装具を使用せずに職場復帰することであり公共交通機関の利用や10分程度の連続歩行を含む1時間の通勤が必要であった。
【経過と治療】左足関節背屈筋に対して神経筋再教育、立脚期での骨盤動揺に対し殿筋トレーニング、転倒リスクを考慮しながら活動量の増加、歩行速度の向上を図るためBWSTTを実施した。30病日、中間評価を実施。左股関節外転MMT5、左足関節背屈MMT2、片脚立位R/L(秒):39/16、独歩にて10m歩行:6.2秒、TUG-t:7.4秒、6MD:421m(約4.2㎞/h)。歩行速度の向上がみられ立脚期での骨盤動揺も軽減した。しかし、drop footは残存し歩行中の躓きは依然として認められた。ここで転倒予防策として歩行速度に着目しペーシング指導を試みた。同年代女性平均歩行速度である約4.0㎞/hを目安に、ウォーキングメジャーを使用し歩行距離と時間を計測しながら屋外歩行を実施した。躓いた際の連続歩行距離と時間、歩行速度をその都度フィードバックした。41病日、最終評価を実施。左股関節外転MMT5、左足関節背屈MMT2、片脚立位R/L(秒)33/21、独歩にて10m歩行:5.8秒、TUG-t:7.0秒、6MD:380m(約3.8㎞/h)。屋外歩行を3.8-4.0㎞/hで30分間躓くことなく可能となった。また、実際の通勤経路で動作確認を実施し人混みにも対応し躓くことなく遂行できた。
【結論】今回、転倒に対して恐怖感が少なく楽観的な反復転倒歴患者を担当した。担当当初より身体機能、歩行能力改善を目的に理学療法を実施したがdrop footは残存し転倒リスクが高い状態であった。転倒予防策として歩行速度のペーシング指導を実施したことで職場復帰のための通勤能力を獲得できたと考える。
【倫理的配慮、説明と同意】
【倫理的配慮、説明と同意】対象者には口頭にて説明し、書面にて同意を得た。なお、本演題は当院倫理委員会にて承認を得ている(承認番号HG-IRB19044)。また、本演題は発表者らに開示すべきCOI関係にある企業などはない。
【症例紹介】症例は50代女性。腰部脊柱管狭窄症のためL4/L5部の開窓術およびL5/S1部のPLIFを施行。23年前に左L4/L5、14年前に右L4/L5部椎間板ヘルニアによる手術歴があった。術前からdrop footがあり、転倒を繰り返していた。術後もdrop footは残存し改善はみられなかった。14病日、回復期病棟転棟となり理学療法担当。初期評価では左股関節外転MMT3 、左足関節背屈MMT2、片脚立位R/L(秒):5/4、独歩にて10m歩行:6.9秒(測定終了直後転倒)、TUG-t:17.1秒、6分間歩行テスト(以下、6MD)は230m(3分頃から左足部が床に引っ掛かりはじめ、4分20秒時点で転倒し途中終了)。6MDでの歩行速度は約3.1㎞/hであった。歩行観察では左立脚期で骨盤動揺およびdrop footがみられた。転倒恐怖感の評価であるModified Falls Efficacy Scale(MFES)は126/140であり、転倒を繰り返していたにもかかわらず恐怖感はほとんどなかった。症例の特徴として「前に人がいると抜かしたくなる」、「こけてでも杖や装具を使わずに外出します」など転倒に対して悲観することはなく楽観的な発言がみられた。症例のニーズは杖や装具を使用せずに職場復帰することであり公共交通機関の利用や10分程度の連続歩行を含む1時間の通勤が必要であった。
【経過と治療】左足関節背屈筋に対して神経筋再教育、立脚期での骨盤動揺に対し殿筋トレーニング、転倒リスクを考慮しながら活動量の増加、歩行速度の向上を図るためBWSTTを実施した。30病日、中間評価を実施。左股関節外転MMT5、左足関節背屈MMT2、片脚立位R/L(秒):39/16、独歩にて10m歩行:6.2秒、TUG-t:7.4秒、6MD:421m(約4.2㎞/h)。歩行速度の向上がみられ立脚期での骨盤動揺も軽減した。しかし、drop footは残存し歩行中の躓きは依然として認められた。ここで転倒予防策として歩行速度に着目しペーシング指導を試みた。同年代女性平均歩行速度である約4.0㎞/hを目安に、ウォーキングメジャーを使用し歩行距離と時間を計測しながら屋外歩行を実施した。躓いた際の連続歩行距離と時間、歩行速度をその都度フィードバックした。41病日、最終評価を実施。左股関節外転MMT5、左足関節背屈MMT2、片脚立位R/L(秒)33/21、独歩にて10m歩行:5.8秒、TUG-t:7.0秒、6MD:380m(約3.8㎞/h)。屋外歩行を3.8-4.0㎞/hで30分間躓くことなく可能となった。また、実際の通勤経路で動作確認を実施し人混みにも対応し躓くことなく遂行できた。
【結論】今回、転倒に対して恐怖感が少なく楽観的な反復転倒歴患者を担当した。担当当初より身体機能、歩行能力改善を目的に理学療法を実施したがdrop footは残存し転倒リスクが高い状態であった。転倒予防策として歩行速度のペーシング指導を実施したことで職場復帰のための通勤能力を獲得できたと考える。
【倫理的配慮、説明と同意】
【倫理的配慮、説明と同意】対象者には口頭にて説明し、書面にて同意を得た。なお、本演題は当院倫理委員会にて承認を得ている(承認番号HG-IRB19044)。また、本演題は発表者らに開示すべきCOI関係にある企業などはない。